効率化と品質向上を目指す構内物流標準化マニュアル 第4回 ~保管作業の標準化「保管品質を向上せよ」

保管機能とは
保管機能は「時間的ギャップを埋める活動」と定義される。たとえば夏に採れた農作物を冬に売る場合、その間品質を保持して留め置かなければならない。その役割を担う機能が保管であり、工場においてその機能を支える保管作業が存在する。保管作業では「保管品質」と「保管効率」を重視して標準化しなければならないが、今回は「保管品質」について解説していく。
ロケーション管理基準を定めよう
ロケーションという物流用語がある。これは保管する場所のことを指す。広い工場や倉庫の中におけるロケーション管理をしっかりできていないと物流効率は低下する。行き当たりばったりで保管するのではなく、きちんとロケーションの管理基準を定め、それに沿った形で作業を進めたい。
ロケーションには2種類ある。1つ目は「固定ロケーション」だ。列車でいうと指定席のイメージ。毎回必ず決まった場所に保管することになる。もう1つが「フリーロケーション」だ。列車でいうと自由席のイメージ。置場は定めずに、毎回空いている場所に保管していく方式。ものの物流量が比較的安定している場合には固定ロケーション、大きく変動する場合はフリーロケーションが好ましい。会社の物流量に応じて選択していってほしい。
ロケーションを管理するための基準として2つ考えたい。1つ目は「ロケーション番号基準」だ(図1)。住所表示をイメージしてルール化するとわかりやすい。「所番地」を工場や倉庫の中で割り付けていくのだ。まず大きく保管場をゾーン分けする。そのゾーンをAゾーン、Bゾーンといったように住所でいうところの「町名」を割り振る。次にその中の通路番号を決める。「丁目」のイメージだ。通路番号01、02というように決めればよい。さらにその通路の両サイドの棚について右であれば「R」、左であれば「L」というように定義づける。これが「番地」。ここに棚位置番号を加える。手前から01、02という連番でよいだろう。これは「号」のイメージ。最後に棚の中の位置を定める。上段をX、中段をY、下段をZとする。これは集合住宅の「部屋番号」といったところ。

次に各ロケーションの間口にはっきりとした表示を取り付けることを「ロケーション表示基準」として定めよう(図2)。よく間口に小さな表示をつけている工場を見かけるが、それだと間違いのもとであり保管品質にも影響を与える。間口には「のれん方式」の表示をつけることをお勧めする。間口の上部に間口がやや隠れるくらいの「のれん」のような表示をつける。この少々邪魔に感じる表示は投入、取り出しの際に作業者の意識を喚起し、間違いを減らす効果があるのだ。

以上のように保管作業の標準作業設定前にロケーション管理基準を定めておくことが望ましい。
保管品質の基本「在庫管理の4原則」
物流に携わっている人ならば一度はお聞きになったことがある「在庫管理の4原則」。これは保管品質上避けられない原則。標準化時には必ず徹底するように定めよう。その4原則とは①在庫の所在がすぐわかる、②在庫の量がすぐわかる、③先入先出ができる、④アクションのポイントが明確になっている、の4つだ。図2の表示の中にこの原則が記されている。ロケーション番号と部品番号で所在がわかり、在庫の最大値と最小値が記されていることで量がすぐわかるとともにその量が正常か異常かも判断できる。さらに最大在庫になれば発注や生産を止め、最小在庫になれば生産や発注を開始するといったアクションにつながる。先入先出だけはものの置き方で可能としたい。
保管品質基準を定めよう
保管を行う際に最も重視される品質だが、その判断の基準があいまいだと支障を及ぼしかねない。そこで物流標準化の一環として「保管品質基準」を定めておくことが望ましい。保管している時間が製品や部品に影響を与えることがある。特に温度管理や湿度管理が求められる製品の保管では温度、湿度を数字で定める必要がある。食品では消費期限管理が重要。客先にこの期限を前後して出荷してしまったらクレームとなる。一般的な保管基準の例を図3に記しておいたのでチェックしておいていただきたい。

併せて保管品質を向上させるためのKPIを設定しておくとよいと思う。KPIの例として「ロケーション表示設定率」などはどうだろう。保管品が入れ替わる際に表示の付け替えが追い付いていない工場を見かけることがある。それに伴う誤出荷を防ぐためにもこのようなKPIは効果的だ。
【第4回まとめ】
● 保管作業の標準作業書を作成する前に「ロケーション番号基準」と「ロケーション表示基準」を定めよう。
● 特に表示は「のれん方式」とすることが保管品質上望ましい。
● 保管作業標準化の際には「在庫管理の4原則」を徹底することを心がけよう。
● 保管品質の判断基準を明確化し「保管品質基準」にまとめよう。
● 保管品質向上につながるKPIを設定しよう。
この記事の作者
仙石 惠一
合同会社Kein物流改善研究所 代表社員








