物流塾

HAI ROBOTICS:世界に広がる物流自動化ソリューション 日本法人設立5周年

日本市場に根差すロボット型高密度保管システムの現在地

日本の物流現場は、いま大きな転換点を迎えている。

少子高齢化に伴う人手不足、倉庫用地や保管スペースの制約、EC市場の拡大による多品種少量出荷、サプライチェーン全体に求められる安定性と持続可能性。これらの課題は、単一の設備導入だけで解決できるものではなく、物流現場の構造そのものを見直す必要性を高めている。

従来、倉庫内の自動化といえば、コンベア、固定式自動倉庫、シャトルシステムなどが中心であった。

これらは高い処理能力や安定性を発揮する一方で、建屋条件、レイアウト変更、段階的な拡張、運用変更への対応には一定の制約があった。近年はロボット技術とソフトウェア制御の進化により、保管・搬送・ピッキングを柔軟に組み合わせる新しい選択肢が広がっている。

その中で注目されているのが、ロボット型高密度保管システムである。

人が商品を探し、歩き、運ぶ従来型の運用から、ロボットが必要な商品を作業者のもとへ搬送するGoods to Person型の運用へ転換することで、歩行時間や探索時間を削減し、作業品質の安定化を図ることができる。

また、ラック高さや保管密度を活かすことで、限られた倉庫空間を有効に活用できる点も大きな特徴である。

HAI ROBOTICS JAPANは、こうした日本市場の物流課題に向き合うため、2021年8月に設立された。

設立から5年を迎える現在、同社は単に海外製ロボットを日本に紹介する企業ではなく、日本の物流現場に適合した自動化システムを設計・実装し、導入後の安定稼働まで支援する企業として歩みを進めている。

HAI ROBOTICSとは何か

HAI ROBOTICSは、2016年に中国・深圳で設立された倉庫自動化ソリューション企業である。

ロボット技術と高度なアルゴリズムを活用し、高効率・高知能・高柔軟性を兼ね備えた倉庫自動化ソリューションを提供している。

グローバルでは、従業員数1,700名以上、ロボット累計販売台数30,000台以上、特許数は申請中を含め2,400件以上を有している。

また、従業員の約半数がエンジニアであり、研究開発を重視する企業文化を持つ。

サービス提供地域は40以上の国と地域に広がり、プロジェクト実行数は1,700件以上に達している。

同社の特徴は、ロボット単体の提供にとどまらない点にある。

ケースハンドリングロボットを中心としたハードウェア、倉庫実行や設備制御を担うソフトウェア、研究開発から設計、製造、導入支援までを一体で進める体制を有している。

実際の現場では、商品の荷姿、出荷頻度、作業者動線、上位システムとの連携、保守体制、安全対策など、多くの要素を統合して初めて安定した運用が成立する。

日本法人設立の背景

日本では、倉庫内作業の人手不足、熟練作業者への依存、保管スペース不足、出荷波動への対応など、多くの物流課題が顕在化している。

特に都市部や既存施設では、新たな倉庫用地の確保や大規模な増床が容易ではない。

そのため、既存の建屋内で保管能力を高め、限られた人員で安定した運用を継続することが重要になっている。

HAI ROBOTICS JAPANは、こうした日本市場のニーズに応えるため、2021年8月に設立された。

当初は埼玉県入間郡三芳町を拠点として事業を展開していたが、日本市場での導入実績の拡大とサポート体制の強化に伴い、2026年5月に東京都大田区平和島の東京流通センター(TRC)へ本社およびテクニカルセンターを移転した。

物流企業や荷主企業が集積する国内有数の物流拠点に拠点を構えることで、導入前の検討から設計、導入、アフターサポートまで、国内のお客様に密着したサービスを提供できる体制を整えている。

この移転は単なるオフィス移転ではなく、日本市場へのコミットメントをさらに強めるための戦略的な取り組みでもある。

実際の物流現場に近い環境で顧客とのコミュニケーションや技術検証を行い、より迅速かつ実践的なサポートを実現することを目的としている。

日本市場で海外発の自動化システムを導入する場合、製品性能だけでは十分ではない。

日本特有の品質要求、現場運用、建築・安全面の条件、保守対応、顧客との合意形成など、さまざまな要件を丁寧に満たす必要がある。

HAI ROBOTICS JAPANの役割は、グローバルで培われた技術を日本市場へ単純に持ち込むことではない。

日本の現場条件を理解し、顧客要件を技術要件へ落とし込み、本社R&Dや製造部門と連携しながら、実際に稼働する仕組みとして実装することにある。

技術検証から本格導入へ

HAI ROBOTICS JAPANの5年間は、日本市場におけるロボット型高密度保管システムの普及過程そのものでもある。

設立初期の2021年から2023年にかけては、製造業や一部の小売業を中心に、技術検証や部分最適を目的とした導入が中心であった。

プロジェクトあたりの導入規模も5台から15台程度であり、日本市場における適用可能性を確認していく段階であった。

一方、2024年から2025年にかけては、導入の目的と規模が大きく変化している。単なる技術検証ではなく、人手不足への対応、保管能力の向上、ピッキング工程の安定化、工場内物流や物流センター全体の再設計など、本格的な自動化投資として採用されるケースが増えている。

プロジェクトあたりの導入規模も50台から150台規模へと拡大し、部分最適から全体最適へと移行しつつある。

国内では、製造業、小売業、物流業、ITサービス業など幅広い業界で導入が進んでいる。具体的には、電子部品、精密機器、産業機器、アパレル、スポーツ用品、日用雑貨、3PLなど、多様な用途で活用されている。

2021年から2025年末までの国内累計導入済台数は725台を超え、受注済み分を含めると1,200台規模に達している。

この成長は、ロボット型保管システムが実証段階から実際の業務を支えるインフラへと移行しつつあることを示している。

日本市場で求められる実装力

物流自動化において重要なのは、機器の性能だけではない。どれほど優れたロボットであっても、現場の運用に適合しなければ十分な効果は発揮できない。

物流現場には、商品特性、荷姿、SKU数、出荷頻度、保管温度、作業者動線、既存設備、上位システム、建屋条件など、個別の制約条件が存在する。

HAI ROBOTICS JAPANが日本市場で重視してきたのは、この個別性に向き合う実装力である。

HAI ROBOTICSの強みは、大きく三つに整理できる。

第一に、ケースハンドリングロボットを中心としたハードウェアである。高所保管や多様なケースハンドリングに対応し、従来の人手中心の保管・搬送作業をGoods to Person型へ転換する基盤となる。

第二に、ソフトウェアである。HaiQと呼ばれるプラットフォームは、倉庫実行システム、設備スケジューリング、データ分析・可視化などの機能を備え、ロボットや周辺設備の動きを統合的に制御する。物流自動化では、入出庫、在庫、作業指示、設備連携、タスク配分をどのように最適化するかが重要となる。ソフトウェアは、ハードウェアの能力を最大限に引き出す頭脳の役割を果たす。

第三に、垂直統合型の開発・実装体制である。メカ設計、制御、アルゴリズム、ソフトウェア、現場実装までを一体で進めることで、導入後も継続的に改善できる余地が生まれる。物流現場は常に変化する。取扱商品が変わり、物量が変わり、荷主や販売チャネルが変わる中で、システムもまた柔軟に対応していく必要がある。

日本市場対応と導入後サポート

海外発の自動化技術を日本市場で普及させるうえでは、言語や文化の違いも重要な論点となる。顧客が求める品質基準や現場感覚を正確に理解し、それを開発側へ正しく伝えることができなければ、導入プロジェクトは円滑に進まない。

HAI ROBOTICS JAPANは、中国本社の技術力と日本市場の現場要求をつなぐ重要な役割を担っている。

日本の顧客要件を本社R&Dへ直接共有し、技術的な背景や現場で求められる要件を正確に反映することで、認識のずれを抑え、より実効性の高い提案・設計につなげている。

また、自動化設備は導入して終わりではない。

むしろ本当の価値は、稼働開始後に安定して運用され、現場の生産性向上や品質安定に貢献し続けることにある。

HAI ROBOTICS JAPANでは、保守サポート、リモート対応、遠隔監視、稼働状況レポート、定期点検、予防保全、部品交換、ソフトウェアアップデート、オンサイト対応、トレーニングなど、導入後の安定稼働を支えるサポート体制を整えている。

特に、ロボット、ワークステーション、ラック、ネットワーク、サーバー、周辺設備などが一体となる自動化システムでは、一つの要素の不具合が全体の運用に影響する可能性がある。

そのため、定期的な点検や予防保全、稼働状況の可視化、トラブル発生時の迅速な対応が不可欠である。

加えて、オペレーター、保守担当者、管理者それぞれに応じた教育も重要となる。自動化は人を不要にするものではなく、人の役割を変えるものである。

製品ラインナップの広がり

HAI ROBOTICS JAPANが日本市場で展開するHaiPick Systemには、複数のソリューションが存在する。

基本モデルであるHaiPick System1は、製造業や部品物流など多品種少量の保管・供給に対応する。

HaiPick System3は、大・小マルチ混合保管や高密度・高スループットが求められる現場に対応する。

さらに、HaiPick Climbは、倉庫の高さをより有効活用するクライミング型ソリューションである。限られた床面積の中で保管効率を高めたい現場に対し、高密度保管と柔軟な拡張性を提供する選択肢となる。

これらの製品群に共通するのは、単なる搬送の自動化ではなく、保管・搬送・ピッキング・データ管理を一体として捉える点である。

物流現場の課題は、搬送距離だけにあるわけではない。在庫精度、作業品質、SKU管理、出荷波動、人員配置、スペース制約などが複雑に絡み合っている。ロボット型高密度保管システムは、これらの課題に対して、現場運用そのものを再設計するための基盤となる。

持続可能な物流インフラに向けて

今後、日本の物流現場では、さらに高度な自動化・省人化が求められる。

人口減少により労働力の確保は一層難しくなり、EC化や多品種少量化によって倉庫内作業は複雑化する。また、サプライチェーン全体では、安定供給、BCP、環境負荷低減、持続可能性といった観点も重要性を増している。

このような環境下では、物流施設を単なる保管場所として捉えるのではなく、事業継続と顧客サービスを支える社会インフラとして捉える視点が必要になる。

倉庫内の作業効率を高めることは、単に現場の省人化にとどまらない。

出荷の安定化、在庫管理の精度向上、作業品質の平準化、限られた空間の有効活用を通じて、サプライチェーン全体の強靭化にもつながる。

特に、既存の物流施設をいかに有効活用するかは、今後ますます重要なテーマとなる。

新たな倉庫用地の確保や大規模な増床が容易ではない中で、限られた床面積と高さを最大限に活かし、保管能力と処理能力を高めることは、多くの企業にとって現実的かつ重要な選択肢である。

HAI ROBOTICS JAPANの5年間は、日本市場における物流自動化の可能性と課題の双方に向き合ってきた歩みである。

ロボット技術は、単に作業を置き換えるためのものではない。

限られた空間を有効に使い、人の負担を軽減し、作業品質を安定させ、サプライチェーン全体の持続可能性を高めるための手段である。

設立から5年を迎えたHAI ROBOTICS JAPANは、これからも日本の物流現場に寄り添い、ロボット型高密度保管システムを通じて、持続可能な物流インフラの構築に貢献していく。

この記事の作者
今村 裕

株式会社HAI ROBOTICS JAPAN 営業部 Logistics Consultant