効率化と品質向上を目指す構内物流標準化マニュアル 第11回~工場内物流安全に関する標準化

フォークリフト荷扱いの標準化
工場内物流において、安全上最も注意が必要となる作業はフォークリフトの荷扱いである。
フォークリフトによる労働災害は重大な事故に直結しやすいため、明確なルール(基準)を定め、その遵守を徹底させることが重要だ。
なお、各作業に共通する共通ルールは、現場レベルの標準作業書ではなく、その上位文書である「基準書」に定めておくのが望ましいアプローチである。
図1に「フォークリフト荷扱い基準」の例を示した。
ここには主として法令で定められている遵守事項を記している。
フォークリフトは労働安全衛生法(施行令、安全衛生規則を含む)で事細かに定めがあるため、一度法令にも目を通しておくことが望ましい。
労働基準監督署に行けば、フォークリフトに関する必要事項をまとめたリーフレットを入手できる。法令を読むのが苦手な方は、最低でもこのリーフレットを入手し、それを手本に自社の基準を定めるとよい。

図2には、フォークリフト荷扱い基準のうち、各作業で共通となる「禁止事項」と「注意事項」をまとめた。
この基準はそのまま読者の工場でも活用できる。
自社の環境に合わせて不足項目があれば追記してほしい。また、フォークリフトは「車両系荷役運搬機械等」に含まれるため、法律上「作業計画」の作成義務がある。
その必要性についても、あらかじめ基準として明確に定めておきたい(図3)。


保管・荷物取り扱いの基準と注意事項
保管効率を高めるためには、倉庫内の高さを有効活用することになる。
一般的にはフォークリフトやクレーンを使用して高積みを行うが、その安全を担保するために「高さ基準」をルール化しておくことが望ましい。
また、あまり馴染みがないかもしれないが、物流現場には「はい作業」と呼ばれる作業がある。
「はい」とは、袋物、箱物、木材などが倉庫や土場に積み重ねられた荷の集団(山)を指す。この「はい」の上で結束を外す、バラす、検数や点検を行うといった作業を「はい作業」と呼ぶ。
高さが2メートル以上となる「はい作業」を行う場合、労働安全衛生法により「はい作業主任者」の選任が義務づけられている。
また、従事する作業者への安全衛生教育(はい作業従事者安全衛生教育)も必要だ。該当する作業がある工場は、必ず体制を確認されたい。
もう一つ、荷物の取り扱い時に注意したいのが「重量」である。労働基準法や各種指針では、作業の種類によって取り扱い重量の目安が示されている。
● 継続作業: 荷物の積み込みなどのように、連続して行われる負担の大きい作業。
● 断続作業: 荷物の運搬と運転を交互に行うなどのように、作業が途切れるもの。
厚生労働省の腰痛予防対策指針などに基づくと、18歳以上の男性が人力で取り扱う重量の目安は「体重の約40%以下(おおむね30kg)」とされている。
女性の場合はその6割(おおむね20kg以下)に留めることが推奨されている。
ちなみに、筆者が在籍していた自動車業界では、継続作業を前提として「15kg以下」を自主基準としていた。
図4には、この実務を前提とした「運搬重量基準」の例を記している。

工場内物流安全に関するKPI
工場内物流の安全管理におけるKPIは、結果系KPIとして「事故発生件数」を設定するのが一般的である。
この際、単に件数を追うのではなく、「物損事故」と「人身事故」の2つに分けて評価することをおすすめする。
一方、要因系KPI(プロセス評価)としては、「安全教育の実施回数」や「ヒヤリハットの提出件数」などが考えられる。
しかし、現場を最も変えるために重要なのは「標準作業遵守率」である。定期的な作業観察を実施し、各作業員が定めた標準作業を本当に遵守しているかどうかを定量的に確認・評価する。
これこそが、事故を未然に防ぐ「物流エンジニアリング」的なアプローチとなる。
【第11回まとめ】
① フォークリフト災害防止: 重大災害に直結しやすいため、法規を踏まえた強固な基準を最上位文書として整備する。
② 高さと重量の基準化: 保管効率を高めるための「高さ基準」や、腰痛予防のための「運搬重量基準」を明文化する。
③ はい作業の法規順守: 2メートル以上の「はい作業」がある場合は、主任者の選任と安全衛生教育を徹底する。
④ 安全KPIの設計: 結果系KPI(事故発生件数:物損・人身)だけでなく、要因系KPIとして「標準作業遵守率」を測定し、形骸化を防ぐ。
この記事の作者
仙石 惠一
合同会社Kein物流改善研究所 代表社員











