物流業でもこれくらいは語ろう、「なぜ円安は進むのか?」
日銀の大規模金融緩和が終わりを告げようとしています。マイナス金利からプラス金利へ、銀行の定期預金も0.01%から0.2%へと20倍になりました。アベノミクスで偏った金融政策が転換しているのに、日米為替は円安に振れています。今後さらに物価高が起きるでしょう。原油価格も輸入食品、電力やガソリンも上がり続けて、インフレ基調になります。
為替はどんな条件で動くのか
強いドル、弱い円は、貿易精算だけでなく、各国の余剰資金が金利差をめがけて移動するためにドルや円の需給が影響して為替変動を起こすと言われています。ドルやポンド、元や円ではどの通貨を保有することが有利かは、中央銀行の政策金利を見ることで傾向がわかります。政策金利は預貯金の金利に連動するからです。
アメリカ FRB 5.5%
イギリス 中央銀行 5.25%
中国 LPR 3.5%
日本 日銀 0.1%
★トルコ 中央銀行 50.0%
これでも明らかなように、仮に100万円の資金があれば、ドルで保有するのと円で持つのでは、圧倒的にドルが有利です。為替相場は通貨の需要に左右されるので、ドルが強く円が弱くなります。
「ファンダメンタルズを注視しながら、あらゆる手段を講じる」と財務大臣や財務官、日銀総裁が発言しているのは、<マイナス金利を解除したのだから、円高に向かわないのがおかしい>と思い込んでいるからです。賃上げと物価水準が2%越えになったから、金融緩和政策転換をしたのに、「なぜだ!!!!」と臍を噛んで叫んでいるに過ぎません。
アベノミクス前のバブル経済終了直後の日本では、日銀総裁の発言で為替は大きく変動しました。古くは1ドル360円の時代から、徐々に円は高くなり、一時期には1ドル80円という「円高不況」もあったからです。
なぜ円安が止まらないのか
中央銀行の政策金利差によって、世界の資金は有利な通貨を選択して動きます。貿易決裁にはドルが主軸なので、対ドル価格がメインになります。円安は貿易ビジネスには好影響です。数年前まで1ドル100円だったものが、現在は150円ですから同じ数量同じ価格でも売上は50%増しになるので、輸出企業の最たる自動車産業はウハウハ状態です。トヨタが最高益を計上するのも当然でしょう。
逆に食品などの輸入価格は5割増となって、特に小麦や石油は政府が一括して買い上げているので火の車状態です。
日本の産業市場規模マップは、もう完全に内需だけで成り立っていることに気づきますか。 こんな事もあって、為替動向にはほとんど関心が向かないのです。エネルギー価格が高いなぁ、程度の認識しかないから、世界での通貨問題には無関心になっていても仕方がないですね。
日本は大丈夫か?
製品価格やガソリン価格にそのまま反映しては国民生活が破綻するので、補助金をじゃぶじゃぶ投入していて、補助金予算のために国債の追加発行を行っている状態です。
その国債ですが、アベノミクス以降の国家予算は100兆円を越える規模まで拡大一方で、そのための借金が国債発行になっていて、日銀の発行残高(正確には政府が発行して、日銀が買い取り、その国債を金融機関と預金者が購入しているわけです)は今や700兆円という、我が国のGDPをはるかに超える額まで膨張しています。プライマリーバランス(税収と国家支出を帳尻合わせする)を2050年までに実現する約束でしたが、もう無理なことは確実です。
円という通貨が安くなるのは、国力が下がっていること、実力不足、経済状況が芳しくない、将来性が乏しいなどの「弱さ」の表現になっています。同時に日本銀行の資産膨張状況も反映しています
日本銀行は資本金1億円、資産は国債、負債は紙幣発行量で、国内の紙幣発行額は125兆円ほどです。(日本国の国民の総資産は2200兆円と言われていて、およそ半額は預貯金、タンス現金です(資産には不動産、生命保険、株券、公債などが含まれます
1000兆円の現預金がもし、アメリカの高金利へ移動したら、日本経済は一気に1ドル1000円とかいう円安が起こり、物価はハイパーインフレになります。すると金利はトルコ並みの50%などに近づくでしょう。そんなことがあれば、マイホームローンは完全に破綻することになります。
今の日本は本当に危うい状況にあること、きちんと理解しておきたいものです。
ではどうするか、為政者たる政治に関心を深めないといけませんね。
この記事の作者
花房賢佑
ロジトレンド代表