物流塾

物流効率化に向けて~第2回スマート物流EXPO~その1

スマート物流EXPO

 2023年1月25日~27日に物流業界が注目の第2回スマート物流EXPOが東京ビッグサイトで開催された。 スマート物流をキーワードにITシステムやIoT、ロボット、AIなどデジタル技術を駆使して省人化、自動化、GXを極めるための注目のアイテム、サービス、ソリューションが大集合。1400社超の出展社の中から気になる技術を紹介する。

 

京セラコミュニケーションシステム(KCCS)

LPWA(低電力・長距離のデータ通信が可能な技術)を使った通信サービス「Sigfox」を使い、荷物の出荷や開封、位置情報などを追跡するソリューション「SeeGALE(シーゲル)」を参考出展。

フィルム状の通信モジュール(端末)を、例えば梱包の段ボールに貼り付けると、Sigfoxを使って定期的にデータを送信。フィルムの両端には「キリトリ線」があり、一方は通信開始時に、またもう一方は段ボールを開封の際に一緒に切り取られるように貼るという仕掛け。

開封の有無・数量を履か宇できることから在庫確認に便利で、しかも既存のRFIDのように読み込み機器が不要なことからランニングコストの低減が期待できる。またモジュールは再利用が可能。

 

<「SeeGALE」の通信モジュール>

梱包用段ボールにはこのように貼り付け、開封時に通信モジュールのフィルムの一端が切られると、「開封」のデータが自動的に送信される

 

アルプスアルパイン

小型の「物流トラッカー」と「Wi-Fiビーコン」で滞留や「迷子」のパレットやコンテナ、ラックに装着することでこれらの所在の把握を簡単に行える。

前者は「運送状況可視化サービス」で、物流物資に取り付けるだけで必要な時にデータを通信できるのが特徴で、京セラコミュニケーションシステムの通信サービス「Sigfox」(別項参照)とWi-Fiを使うことで低コストを実現。設備の追加コストやタグ読み取りの手間も不要。物流物資の噴出・滞留・流出を把握できるほか、パレットやコンテナ、ラックの積載物や製造年月日などのひもづけも可能。

一方後者は「構内所在管理サービス」で、いわば簡易型Wi-Fiアクセスポイント。

ドイツポストの大型ラックや飲料水のサーバー用アルミ樽にも装着されている

パレットの真ん中の穴の中に物流トラッカーが内蔵されている

愛知機械テクノシステム

各種AGV(無人搬送車)の「CarryBee Series」を展開する同社は、近日発売の2種を展示。1つ目は白いボディの「低床リフターAGV」で、台車の下面に潜り込んでリフトアップして搬送するのが特徴で、一般的な「800×600」「1100×800」台車(最低地上高191mm)に対応、搬送積載重量約300kg、牽引力最大490N(50kgf)。

2つ目は6輪台車を運ぶ「Dragon3」で、一般的な「2428×200×107」サイズの6輪台車に対応、底に潜り込んで自動連結・切り離しができる〝超スリム〟タイプ。搬送重量最大500kg、牽引力最大323N(33kgf)。

「低床リフターAGV」「Dragon3」

協栄産業

同社はドーグが開発した協働運搬ロボット「THOUZER(サウザー)」シリーズを販売するが、今回は既存のロボットよりも初期・運用コストを低く抑えられる小型モデル「サウザーミニ」を展示。バーコードマーカー認識によるハイウェイ方式を採用、ラインは市販の再帰反射テープを使用、ジョイスティックによる手動操作はもちろん、ライントレース走行(有軌道無人走行)やレーザーセンサーによる人や台車の自動追従、メモリトレース(無軌道無人走行。手動操作・無人追従で走行した経路を記憶)もこなす。積載重量最大60kg、牽引力最大150kg相当。

「サウザーミニ」

日本電産シンポ

同社は業界初のビジョンシステムによる自動運行を実現したAGV「S-CART-V100」を出品。車体前面の中央上部に配されたカメラで周囲の様子を三次元で把握、扉や窓、荷物、ポスター、天井の模様、蛍光灯などを画像として認識して自らの位置を正確に把握するという優れモノ。第5世代AGV(ビジョンSLAM)と同社は豪語する。最大搬送重量100kg。

「S-CART-V100」

車体前面中央上部の細長い黒い部分が「S-CART-V100」のまさしく〝目〟となるビジョンシステムのカメラ

エグゾテック

フランス発のユニコーン企業「EXOTEC」は今話題の三次元ピッキング・走行ロボット・システム「Skypod(スカイポッド)」を披露。AGVが三次元に組み立てられたラックに自らよじ登り、前後左右のラックからお目当ての容器を引き出したら降りて作業員の手元まで自走して届けるというモノ。作業の大半がピッキングだというEコマース向け物流倉庫での大幅な省人化・効率化が期待されており、すでにヨドバシカメラが導入を決め2023年夏ごろに稼働させる模様。

「Skypod(スカイポッド)」

ハイロボティクス・ジャパン

中国ハイロボティクス(HAI ROBOTICS)の日本法人である同社は、ACR(自動ケースハンドリング・ロボット)の最新型「HAIPICK S3-L」を国内初出展、多機能ワークステーション「HAIPORT(ハイポート)」と連動させたデモを披露。

タイヤ、トレイ、リール品など異なる形状の商材のピック&プットに対応可能なフォークリフト型ACRで、ケースの最大運搬重量50kg、ピッキングの高さは360~4146mmに対応。

「HAIPICK S3-L」多機能ワークステーション「HAIPORT」

伊藤忠商事

同社はドイツのドローン会社、Wingcopter(ウィングコプター)が開発した「Wingcopter198」を展示。同機は全天候型の固定翼式垂直離着陸機(eVTOL)で、世界で初めて最大3個の異なる荷物を運べるようにゼロから設計。1回の充電で6kgの荷物を最大75km、1kgならば気象条件に関係なく最大95kmまで配送可能。

「Wingcopter198」

 

この記事の作者
コラム記事のライター
和泉 貴志

物流ジャーナリスト 

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