物流KPI制定の落とし穴
物流業界に限ったことではないが、仕事には成果がつきもので、責任と評価がついてまわる。だから、物事すべて結果が最重要だというのもわからないではない。物流活動にとって見れば、納期遵守率とか受注に対する充足率など、はたまた売上高物流経費率などの「結果」を目的にした活動が続けられてきている。だからといって、結果の指標をKPI(重要管理指標)と制定するのはあまりに短絡すぎて、稚拙さに気づかないのではないか。
結果が悪かった時に、どこに立ち戻ればよいのかを示さないとマネジメント活動とは言えないだろう。良い結果をもたらすための管理とは、結果データを集計するのではなく、それに直結する、もしくは導くための中間指標や先行指標に対して手を下す活動でなくては、良い結果を保証することはできない。
だから、納期遵守率を高めるためのKPIは、受注に対する在庫引当が正常に機能することであり、従って受注分析に依拠した在庫の確保でなくてはならない。納期遵守率を達成するためのKPI指標は、在庫分析時間とその活動時間と言えるのだ。 同じ様に受注充足率とは、欠品が生じていない状況が大前提となるから、どのような受注に備えた在庫引当が重要になるかを見る必要がある。こちらも受注分析をABC評価づけして、BCランクの在庫欠品を予防するための活動時間が必要になる。
ここで気づいたであろうが、納期遵守率と充足率は、どちらも同じKPIで結果を保証することができるのだ。
反論として、納期遵守には遅延や分納などの輸送原因、仕入れ発注原因が影響することも想像できるであろう。だから、こちらの輸送原因を遅延や事故などが起きないように仕向ける活動をKPIに定める必要もあるし、分納という大量受注対応のまずさを担保するKPIも必要になる。
物流コストとは何か
売上高物流経費率というコスト指標を重視するなら、「売上に無関係な活動を抑制するKPI」を最も重点的に検証しなければならないことに気づくだろうか。 物流コストを下げようという純粋な活動に対して、値下げや作業などの効率化はすでに着手済みだから、どのようなKPIを定めようとも効果は少ないはずだ。
物流コストを下げるという結果を求めるためのKPI活動は、売上に無関係な物流活動を見つけ出し、それを排除することに専念することを見逃してはいけない。
売上に関係のない活動には、どのようなものがあるか。列挙することから始めたい。 売上に関係のない活動とは保守保全管理業務に着目して
- 在庫管理
- 事務処理
- 労務管理
- 返品処理
- 諸々の会議
これらを停止するのではなく、如何に時短軽減化するかを志向する事が重要であり、これこそコストに直結するKPIとする事が求められる。
マイナス売上になる返品業務に注目すれば、受け入れるだけで後は放置する事が最大の目的になり、再出荷の指示があってから手がけるようにするべきだ。
その他の業務や活動はアナログ排除によって、多くは時短簡略化が可能になるはずだ。
やらないことの正義
コスト削減に直結する「やらない決意」の次に目を向けるのは、コストのパフォーマンス効果である。
物流関連のコストには輸送費、場所代、人件費、インフラ、保険、情報処理、消耗品などの多くの費目があるが、全ては販売売上活動に欠かせない必要経費と見ると、コストを掛けてどれだけの売上に貢献したのかという、従来とは異なる視野が見えるはずだ。
ここから生まれる物流コスト削減のKPIは、受注単価、顧客の注文回数、1件あたりの商品数、RFM指数などが挙げられるだろう。またネガティブKPIでは、返品率、返品金額、既存客の流失率、新規口座の獲得数なども直結するはずだ。
だから、結果を追うのではなくプロセス重視に転換することの重要性に気づきたい。
この記事の作者
花房賢祐
ロジスティクストレンド代表