経営哲学としてのSCM、その本当の目的とは
製品商品のサプライチェーンは、自社内から外部仕入先、生産材料の調達先までを範囲としている。発展段階でレベル3を成功させ、縫製工場のその先の撚糸加工までを接続させているのが、日本では唯一のSCM成功事例と言えるだろう。
そのグループは『靴下屋』を展開するタビオ社である。その苦労は20余年の成果にあり、関与する企業群をWIN-WINで実現できたという。
SCM実現には大変な苦労を伴う。部門を越えた情報共有、部分最適の行動様式からビジネス全体の全体最適を目指そうという志は、「総論賛成、各論反対いや拒否」にもつながるという。
“情報が盗まれる”、“(隠れていた押し込み)売上活動を阻害する”、“(止められない)大量購買ができなくなる”、“自部門のKPIが縮小する”など、レベル2の段階ですら、社内に紛争状態をもたらしてきた。
「効果はわかるけれども、直ちに取り組みには多くの調整活動が必要だ」という決議を経て、回覧議事録でシャットダウンしてきた事例のいかに多かったことか。
外部関与のコンサルとして、もどかしさを越えて、ホゾを噛む思いだった。
『やりたいが、できない理由』はいくつでも挙げられる。まず第一に、企業内には在庫問題がつきまとっているからだ。
製販部門が対立する理由、机の両方に対峙して、決して両隣に座ることがない企業文化の本質は、組織ごとの業績評価つまりはKPIの設定にある。ここに「総論賛成、各論反対いや拒否」の本質が隠されている。
在庫の評価で「削減、圧縮」が議論されると一斉に本質を外れた議論に向かってしまう。
欠品、過剰、不良の在庫三悪を防止抑制排除することが重要なのに、在庫に触れることは自らの部門業績に直結するために総論賛成で終始してしまう。
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在庫を抑制圧縮すると
▲販売部門では、一気に欠品や品薄による取り合いが激化する
▲生産、購買部門では、原価低減の方策を失い過去見積が使えなくなる
◎フリーキャッシュが拡大し、売れ筋を追加して欠品抑制につながる
○過剰在庫、不良在庫が表面化して過去の責任問題が表れる
このように、SCM開始直後にはすぐさま大きな変化をもたらしてしまう。
組織改革であり、業績指標見直し、行動変容の強制であるが、顧客満足向上とフリーキャッシュの発掘が可能になるのだ。
だから、SCMは願えども叶わない、経営の最終哲学と言われている。早く気づいてほしい、SCMとは企業に埋もれてしまったフリーキャッシュを
【欠品防止で売上拡大、在庫抑制で投資資金を回収】
できるのだ。
しかし到底、自社の文化圏内だけでは実現は厳しいだろう。
この記事の作者
花房賢祐
ロジスティクストレンド代表