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小売業の送料無料はタブーなのか?

 通信販売での送料負担が常に問題視されてきた。最近では楽天市場が送料問題を個別対応から転向して、購入金額に応じた無料方針を打ち出している。
出店者に波紋が広がっており、まだ決着していない。Amazonはプライム会員には無料を打ち出し、その他には購入者に負担させている。
ZOZOはかつて、送料自由払だったが撤回した。
Amazonは宅配事業者の唐突値上げ対策として、自営物流網を整備し始めており、ラストワンマイル(最終地域配送)はコストとその負担問題として揺れ動いている
 古くは中元歳暮での時期に百貨店で「受益者負担」というスローガンから送料を消費者負担に転換してきたが、今では再び曖昧な状況に戻っているらしい。

 テレビ通販では今でも送料問題が左右に揺れており、商品低価格の訴求を打ち出しながらも送料は実態価格よりも遥かに高いレベルで小さく表示されている。
 送料問題は無店舗販売という業態固有のものであり、小売店舗では門前交換なので送料は必要ないとされてきた
 ところが、ギフトや中元歳暮のための販売では宅配料金を別に求められることも珍しくなく、消費者はこの追加負担にはあまり意識が向いて来なかった。
もちろん、送料無料を打ち出すことで他社との差別化、低価格競争を進めることはできるわけであり、コスト負担と売上向上の戦術に、送料無料は重要な打ち手となってきた。

消費税はいりません!どんな商法、計算になるのか?

送料無料というセールストークと似たものに、「消費税はいただきません」的なスローガンが店頭に並ぶことがあった。今では過当競争となるために、この表現は禁じられているようであるが、果たしてそれは誤解を招くことなのだろうか。

 消費税を販売側が負担するというのは、売価プラス10%相当の消費税分を値引き対象となるわけだが、店舗にしてみれば例えば小売価格100円の消費税相当額10円、を消費者の代わりに負担しているのか、というとそうではない。売価の10%というのは、売価設定に左右されるわけであり、自由競争の元では標準小売価格の強制力はすでに存在しない。売価を自由に決められるのなら、その消費税相当負担額も自由裁量なのだ。

 小売店であれば、商品仕入れの際にすでに消費税を支払っており、仮に小売価格100円の商品を仕入れ価格60円で仕入れているとすれば、その仕入れに関わる消費税は6円を先に仕入先に支払っていることになる。(精算の時期は販売時期よりも遅れるときもある)

 そうすると、販売価格100円の販売に関わる消費者が負担すべき消費税は、仮受け消費税として10円であるが、実際に小売業者が負担するのは先に6円支払っているので、差額の4円が新規の負担額なる。
つまり、100円商品を販売したことによる消費税負担は、実際には10円ではなく4円ということになる。(小売業者にとっての消費税は、粗利額の10%なので4円
 仕入れの段階で6円を支払い、小売の段階で消費者から10円を受領していれば、新たに収めるべき消費納税額は10円マイナス6円で4円ということになる。

 更に付け加えるなら、先払い消費税は商品仕入れだけでなく、家賃電気代保険料その他すべての経費や派遣従業員のサービス料金にも付加されており、月次収支や決算段階で経常利益が生じない場合、つまりは欠損か損益分岐である場合には、小売価格での仮受消費税は粗利ゼロのばあいには益税となってしまう。(消費税納税額がゼロ
 ちなみに、消費税は内国税なので、販売先が外国人や貿易による海外販売であれば、仕入れの段階で支払った仮払い消費税は還付を受けることができる。自動車を国内で生産して海外に販売する際には、仕入れ時の消費税相当額還付が行われ、トヨタなどは数百億円にも登ると言われている。

送料無料は小売業にとってどれほどの負担、サービスに相当するのか?

 ネット通販という業態は店舗や人件費をかけずに24時間365日、商圏を超えてどこにでも販売できるパワーを小売業者に与えた。無店舗販売や通信販売はこのメリットを活かして急成長を遂げてきたが、小売店からは「店舗や販売員コスト負担というリスクを逃げた」と揶揄され、煙たがられる存在であった時期もある。確かに店舗を構え、従業員を配置すれば莫大なコストと背中合わせの営業活動となる訳だが、無店舗販売では倉庫や工場からの直送であり、すべてが変動費用のようなもので、売れなければコスト負担もほとんど生じない。
店舗費用や販売員は固定費であり、送料は変動費とみれば、どちらも販売に関わる「販売管理費」であり、消費者に対して送料だけを受益者として負担させようとしたり、それを値引きやサービスの対象としてことさら際立たせるのは疑問がある
 小売店舗の店舗費用、従業員人件費、無店舗販売の運営人件費と販売のための諸々の費用と送料は、すべて販売管理費として経理処理され、利益計算のなかでは原価項目に反映されるはずだ。送料や倉庫費用は物流費としてカウントしたとしても、依然として販売管理費であることに違いはなく、どこまでが小売業の負担でどこからが消費者の負担なのか、という境界線は明確に定まっているわけではないことに気づくだろう。

送料無料を打ち出せば、高度な原価計算が売り物になる

 店頭価格、通販価格と送料という料金体系について、消費者の理解と支持が得られているかと言えば曖昧だろう。もし、店頭価格も通販価格も同一であり、店舗で面前販売するのと通販で自宅まで配送するのと消費者の選択次第であるとしたら、一体どんな影響が生まれるだろうか。送料分を更に値引きしろとゴネることになるのだろうか。

 小売側では送料負担が増えると考えるだろうが、もともと小売店舗を持つならば、店舗維持費や販売員人件費その他、販売管理費を織り込んでの事業計画が立てられているはずであり、送料を全額負担するならそれも計算に組み入れるだけのことになる。店頭販売と宅配販売に割合が読みきれないと言うなら、仮に送料負担が売価の5〜10%となるならば、その他の経費をどのように見積るかによって事業計画が成り立つはずだ。

 店舗経費がなく、物流経費だけが販売管理費であるなら、よりシンプルに事業計画が成り立つだろう。現在であればどのような販売促進広告よりも、<送料一切無料>さらには消費税もいただきません!宣言がインパクト大となるはずだ。

裁定売価こそが勝敗の分かれ道である

 裁定取引(アービトラージ)とは、価格差で利益を捻出する方法であり、買い手にも売り手にも双方にチャンスがある。価格差、利益差額は常にあり、タイミングこそが勝敗を分ける。最低価格保証研究はすでに完結しており、「どこよりも安い販売」が必ずしも成功をもたらすわけではないことが証明されている。
 送料無料が勝機を分けるかもしれないが、それよりも積年の問題に決着をつけることが大きなニュースや話題となり、新たな小売業のスタートになるだろう。

 

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コラム記事のライター
花房陵 ロジスティクス トレンド(株)

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