物流塾

スループット極大化を目指す活動がある

 3月開催予定の第216回物流塾も中止になった。残念である。国難とも、過剰反応による人災とも言える事態が続いている。ウィルスの拡散が生命の危機につながる見えない敵とはいえ、毎年のインフルエンザ死亡者の数%罹患率だし、高齢者の死因は糖尿病起因よりはるかに低い。このような医学的、科学的、歴史的データを見ないで怖がるのはテロリズムと同床異夢と言えよう。

紛争や戦争も生命の危機を招くが、その実数は美食や食べ過ぎの糖尿病より遥かに少ない。テロに巻き込まれる事故は火災や交通事故、労働災害や家庭内転倒、風呂場の溺死数より少ないが、恐いものは恐い。厄介である。ために経済活動は停滞しており、外食や遊興は自粛そのもので街は静まり返った。デマによる買い漁りが起きたが、同じSNS上メッセージ効果で沈静化するのもまもなくだろう。

このまま縮小均衡させないために

 作れない、売れない、客が来ない、運ぶものがない、注文が入らない、人がいなくなった。経済の停滞は物量の縮小に繋がり、中国アジアを巻き込んだ巨大なサプライチェーンの輪が途切れてしまっている。現場を預かる者や経営者には、ベア(くまさん:弱気)な気分に覆われていることだろう。どう考えてもブル(雄牛:強気)になる要素が見つからないからだ。自ずと数値目標は小さくまとめようとして、縮小均衡を図ろうとするだろう。時間を減らし、人手を休ませ、運行車両を削減すること、経費削減しか思い浮かばないのも仕方がない。

 こんな時こそTOC(制約条件の理論、ザ・マネー)を振り返るべきであろう。TOCは製造工場だけでなく物流現場にも十分応用できる極めて優れた考え方なのだ。

 サプライチェーンは原材料工程、製造流通工程のすべてのプレイヤーを繋ぐ概念だが、ボトルネックが必ず存在する。つまり、供給のスピードや能力が低い工程があると、前後の工程に仕掛在庫や滞留が生じてしまう。各工程や企業間の情報が完全に見える化されており、前工程に滞留がわかるようになっていれば応援、支援、スピード調整ができるが、実際には責任分担という名目で各工程や各社は個別努力を行っている。

 すると、滞留はますます遅れを招き、前後には仕掛り在庫が膨れ上がる傾向にあるのは経験則でも十分に理解できる。それぞれが同期されなければ在庫が増えるだけで、資金のムダが積み上がるだけなのだ。

 今、販売や消費が縮小しているときには各工程でも生産能力や加工能力、人手や作業時間を減少・短縮することがサプライチェーン全体の同期につながるから、正しい判断と言える。しかし、販売と消費の縮小というのは自粛や外的要因であるのだから、仕方のないことなのだと決めつけるのは誤りであり、今こそボトルネックを拡大して各工程を広げるチャンスだと言いたい。

なぜならば、原材料不足による生産停止はともかく、売れない状況を打破するために原価すれすれの売価設定を行うことで販路拡大が取れるチャンスと見るべきだ。工場や店舗、販売に関わる固定費を下げられない以上、売価はむやみな値下げを取りたくない気持ちはわかる。しかし、緊急事態宣言が発せられる直前までは特別価格、しかも原材料価格をまかなえるスループット価格であるなら、持ち出し赤字にはならないはずだ。

スループット価格とは

スループット=売上高(収益額)− 変動費(原材料費、固定費や人件費は除く)

 これは追加売上を上げる目安としての価格設定に有効なのであり、別の商品サービスで固定費をまかなえているのであれば、追加の販売価格は原材料のみであってもキャッシュが増えるというミカタである。従来の製造業や流通業の原価管理会計とは全く異なる価格設定や販売手法であり、キャッシュをより多く獲得するための思考法とも言える。

 「赤字にならなければ、いくらで売っても利益になる」という魚売りのザル勘定というものがある。鮮魚のように明日に持ち越せない商品は、「今日の仕入れ代金を稼げたら、残り商品はいくらで売っても利益になる」という考え方がある。より詳しく見れば、固定費を下げる努力より、原価を越える売価で売り急ぐことが重要とも言える。

 このような考え方に基づけば、例えばトラック運賃は無料で貨物を運べることになる。すでに設定した運賃で車両を運行するなら、追加貨物は無料でも固定費や燃料費は変わらない、むしろ競争力強化になると見ることができるのだ。

 ダンピングのススメ、単なる価格競争のすすめではないので、誤解をせずに読み解いて欲しい。

 自粛停止する前にスループット極大化の余地は残されていないだろうか?

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コラム記事のライター
花房陵 ロジスティクス トレンド(株)

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