物流塾

物流商品開発力を磨け

レッドオーシャンからの脱却を図れ

 先日あるセミナーを実施した時のこと。荷主会社の立場で物流会社に対するRFI(Request for information 情報提供のための質問状)を作成するというワークを実施した。その中で複数の受講生が作成した質問事項として「昨年は何件の物流新商品を開発したか」というものがあった。正直意外だったが、これが荷主たる物流の顧客の本音だと思われる。それだけ新たな提案がないということを物語っているのだ。
 物流産業は概してレッドオーシャン的な要素が強い。先日もある運送会社が嘆いていた。帰り荷を探す運送会社がとことん安い値段を荷主に提示していると。つまり復路は空で走るよりも少しでも積載して走る方がましだという素直な考え方に対し、そのルートが往路でのメインである会社にとっては価格破壊になるという嘆きだ。
 しかしこの出来事は何も不思議なことではない。自由競争である以上、価格は相対で決まるのであり、顧客が判断することでもあるから。仮に帰り車が5万円で、往路の会社が10万円だったとすれば、その差額を納得できる品質とサービスでカバーするしか方法はない。
 国土交通省が標準運賃を提示した以降、それがポジティブに作用したこと。それは現状の価格がいかにお得かということを顧客に感じさせるということ。こういった話を時々耳にする。一方で実際に標準運賃なみの価格で顧客と合意したという話はあまり聞かない。間違いなくいえることは地点間の運送は運送会社間での大きな差はつきにくく、レッドオーシャンの様相が強いということだ。この領域にとどまっている限り会社利益を大幅に向上させることは簡単ではない。いかに他社よりも品質やサービスで上回る商品を開発し提供できるか。これがレッドオーシャン脱却の切り口だ。

新たな物流商品は生まれやすい

 Uber Eatsは日本では2016年9月にサービスを開始。稼働レストラン数は東京2区の150店舗からはじまったが、1年後には1000店舗、2年後には3500店舗、3年を待たずに1万店舗を超えるまでに成長している。当システムではさまざまな課題が山積しているものの、新たな物流商品としては空前のヒットだ。物流そのもののべたな商品だが、誰しも始めようとすることはなかった。かつてより日本で今後発生する物流サービスは出前ビジネスだといわれつつも。
 CBクラウドの「ピックゴー 買い物代行」もユーザーの喜ぶしくみだが、理屈は何も難しいものではない。従来から多くの会社が思いついてはいたものの、具体化に至らなかった商品。消費者がアプリで提携企業の全国の店舗から商品を入力。CBクラウドと委託契約を結ぶドライバーの一覧から運んでもらいたい人を選ぶ。ドライバーの評価制度を取り入れ、高評価の人に優先的に高単価の仕事を回すといった、マネジメントシステムも素晴らしい。
 だいぶ前に出てきた物流商品で靴の修理を「引き取り&配送」とセットで行うタイプのものがあった。靴を修理屋に持って行くのが億劫というニーズに沿ったものだった。このような発想で考えれば他にも出てきそうだが、今のところ目立った商品は聞かない。
 これらの商品はいずれも B to C の商品だ。前回のコラムでもいくつか紹介したが、 B to B でもすぐに実施できる商品はいくらでもある。要はやるかやらないかだけの差であって、やる気さえあれば物流は新商品を生み出しやすい分野だと考えてもよいだろう。

顧客の声を聴くことと発想力を磨くこと

 当たり前のことではあるが、物流新商品を開発するためにはより多くの顧客の声を素直に聴くことが基本。自らも実生活の中でこのようなサービスがあったらよいのに、と感じることもあるだろう。それらがすべてヒントになる。簡単なアンケートを実施してみてもよい。一番手っ取り早くできるのは従業員アンケートだ。「物流が関係する新たなサービスでどのようなものがあったらありがたいと思うか」といった質問で、全従業員とその家族に聞いてみる。200人の会社で、従業員以外に2人家族がいたとすれば600人分のデータが集まる。これくらいやる気さえあればすぐにできることではないか。
 併せて実施したいことは従業員の発想力を磨くこと。硬い頭からはよいアイデアは浮かびづらいもの。社内で連想ゲームをやってみる、「不」のつく問題を抽出する、ロールプレイイングを実施するなどの機会をぜひ設けるとよいのではないだろうか。さらに従業員に新商品の提案をさせてみる。社内でできないことを対顧客でできるはずがない。社員研修を行っている時間が無いという管理者の方がいらしたとすれば、まずそのような方向けに「管理職研修」を実施したほうがよいかもしれない。会社が発展するために何をしなければならないかについてじっくりと考えてみてはいかがだろうか。

この記事の作者
コラム記事のライター
仙石 惠一

<Kein物流改善研究所 仙石惠一>
物流改革請負人。ロジスティクス・コンサルタント。物流専門の社会保険労務士。
自動車メーカーでサプライチェーン構築や新工場物流設計、物流人財育成プログラム構築などを経験。
著書 「みるみる効果が上がる! 製造業の輸送改善
~物流コストを30%削減~」
日刊工業新聞、月刊工場管理、月刊プレス技術など連載多数。
http://www.keinlogi.jp/
無料メルマガ 「会社収益がみるみる向上する!1分でわかる物流コスト改善のツボ」 https://www.mag2.com/m/0001069860

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