物流塾

効率化と品質向上を目指す構内物流標準化マニュアル 第3回~入庫作業の標準化

工場内へ保管するための入庫作業

入荷された部品や資材(以下、部品等)を工場内の保管場に格納することを入庫という。入庫のための一連の作業が入庫作業だ。言葉が似ているので説明を加える。主として他社等の外部から所有権の変更が伴って入ってくる機能を入荷と呼び、社内に入ってきた部品等を指定場所に保管のために格納する作業が入庫である。

入庫作業には物理的に部品等を運搬し、指定場所に置く作業やその正確性を担保するためのバーコード照合作業、保管場所を探索したり場所と部品等を紐づけしたりするためのロケーション管理端末(PC)操作、出庫を考慮した先入先出作業などがある。

入庫作業でよくみられるムダ

入庫作業を標準化せずに行き当たりばったりで作業をしていることでムダが発生している工場がある。その典型が「一動作」で入庫できないムダだ。置けるはずのロケーションに別の何かが置かれているため、それをどかすムダ。古い在庫が残っていたため、それを前方に引き出し、新たな入庫部品等を奥に入れるムダ。指定置場でない通路に何かが置かれているために、それをどかして入庫するムダ。こういったムダはすべてルールが決まっていないことで発生している。入庫作業の標準化ではこのようなムダを避けるためのルール決めを実施していこう。

併せて入庫作業でムダを排除し、効率化を追求するためのKPIを設定してみたらよいと思う。KPIとは Key performance indicator のことで、重要業績管理指標と訳される。KPIの例として「一動作入庫比率」などはどうだろう。日々入庫作業を行う際に、上で示したようなムダな動作が発生することなく、一発で入庫できた作業の比率を示す。原則としてこの値が大きければ大きいほど効率は良くなると判断できる。

入庫作業に関係する品質不良と改善策

出庫作業やピッキング作業を行う際に誤出庫、誤ピッキングといった物流品質不良の話がよくでてくる。もちろん、出庫作業者には自分が取り出したものが正しい部品等であることを確認する責務がある。しかしラベルが貼付された箱を取り出す際にはそのラベルが品質保証の手掛かりになるが、棚の中に部品等だけが容器から取り出して投入されている場合にはその部品等の正確さは判断しづらいことがある。

このような場合は「入庫」でミスが発生していた場合、つまり入庫時に誤投入してしまうとそれが誤出荷までつながってしまうことがあり得る。出庫、出荷までのフローも意識し、入庫時の品質保証には細心の注意を払った標準作業を確立したい。併せてできればその部品等を識別できる手掛かりを急所として標準作業書に記すとともに、現場にそのポイントを記した表示を掲示しておくことが望ましい。入庫作業者はその表示を見て部品等を確認の上入庫作業を行うようにしたい。このプロセスを踏むことで入庫品質不良の改善につなげることができるだろう。

入庫作業の標準作業

入庫作業の標準作業を設定する場合、図2のような例が考えられる。この図の内容を補足するものとして「フォークリフト取り扱い基準(以下、基準)」を挙げたい。パレットに積まれた部品等を棚入れする際にはフォークリフトを使うことになる。その際に細かなフォークリフト取り扱いのステップを入庫作業の標準作業に入れるよりも、別に基準を定め、そこに必要情報を集約して入れておくことをお勧めする。基準を定めたうえで、フォークリフトの注意事項はそちらを参照するように記しておこう。

入庫作業における異常の状態と異常時の処置についても明確に記しておこう。図3に例を示した。1つは「指定ロケーションが空いていない」という異常。本来であればそのロケーションに入れられるはずなのに何らかの要因で入れられないことがある。そのような場合によく通路上に置いてしまうようなことがある。このような雑な仕事を行うと、物流現場はどんどん乱れていってしまう。きちんと処置方法を決めておくことが現場秩序を保つ方策だ。

2つ目に「製品を落下させた」という異常。ちょっとした落下は何気なく元の容器に戻してしまうことがある。これは製品品質不良につながる可能性がある危険行為だ。このようなケースでは作業者自身が判断せずに、上司を呼んで判断を仰ぐことを対処方法としてルール化するとよいだろう。

これ以外にも自社で思い浮かぶ異常があればそれを定義するとともに、その対処方法をきちんと定めておこう。

【第3回まとめ】

  • 社内に入ってきた部品等を指定場所に保管のために格納する作業が入庫である。
  • 入庫作業では「一動作」で入庫できないムダをよく見かける。KPIを定めて改善につなげたい。
  • 入庫時に誤投入してしまうとそれが誤出荷までつながってしまうことがあり得る。入庫時の品質保証には細心の注意を払った標準作業を確立したい。
  • 入庫作業における異常の定義と異常発生時の対処方法も明確に記しておこう。
この記事の作者
仙石 惠一

合同会社Kein物流改善研究所 代表社員