外国人ドライバーの育成で日本の物流に持続的発展を

ドライバー高齢化の進行と若年層の流入の乏しさなどを背景に、2024年4月に特定技能制度へ「自動車運送業」分野が追加された。
制度が本格的に動き出してから約1年が経ち、外国人ドライバーの採用は、業界の持続性を支える現実的な選択肢として広がりつつある。
ただ、現場で繰り返し感じることがある。
外国人ドライバー採用の成否は、「良い人材を見つけられるか」では決まらない。採用がスタートする瞬間に、企業側と本人側の認識、そして受け入れ体制がどれだけ整っているか、すなわち「スタートラインの設計」で決まる。
そしてそれを支えるのが、来日前・来日後の両軸にまたがる「育成」である。本稿では、外国人ドライバー受入における「育成」の本質を、業界動向と現場の実態の両面から整理したい。
業界の構造変化|受け入れはすでに加速している
「物流2024年問題」を契機に、ドライバー不足の構造的圧力はさらに強まっている。1人あたりの労働時間が制限される以上、輸送力を維持するには新規のドライバーを継続的に確保しなければならない。
日本のトラックドライバーの平均年齢が約50歳前後で推移する一方、若年層の参入は乏しく、国内人口減少の構造を踏まえれば、日本人ドライバーだけで人員を確保し続けることは現実的とは言いがたい。
外国人ドライバー受入の動きは、すでに加速度的に進んでいる。
受入企業に加入が義務付けられている「自動車運送業分野特定技能協議会」のトラック区分の加入数は、2025年10月時点の約340社から、2026年4月には552社へと急増した。約半年で212社、率にして約40%の増加である。

ヤマト運輸が2027年からの長距離輸送でベトナム人運転手500人を採用する方針を示すなど、大手の動きも本格化している。
一方で、外国人がドライバーとして働くために必須の「特定技能評価試験」には、トラック区分だけでこれまでに累計約4,000名が合格している。
ところが、実際に運送会社への入社に至った人数は約150名(2025年12月時点)にとどまる。
「日本でドライバーとして働きたい」という外国人材が試験合格という形で着実に増えている一方、その人材を受け入れる企業側の動きが追いついていない。
受入の準備を整えた企業に対して、実際に現場で稼働している人材はまだ少ない。
業界は今、受け入れの「準備期」から「実装期」へと一気に移行する局面にある。
問われているのは「受け入れるか否か」ではなく、「どう受け入れ、どう育てるか」である。
採用は「マッチング」ではなく「スタートライン設計」である
外国人ドライバー採用で繰り返し起きるのが、「期待と現実のギャップ」である。最も多いのが、「外国人ドライバー=すぐに一人で走れる即戦力」という前提で採用を進めるケースだ。
実際には、日本独自の配送ルール、荷主対応、構内ルール、運行管理者の指示への対応など、日本の現場特有の業務理解が前提となるため、入社直後から単独乗務できる人材はほとんど存在しない。
能力の問題ではなく、日本の現場で必要な業務知識を前提とした育成が不可欠だからである。
つまり外国人ドライバー採用は、最初から「育成前提」で設計しなければ成立しない。
加えて、業務側の見直しも欠かせない。「今の業務に外国人を組み込むのが難しい」と感じる現場でも、一度業務を分解して整理すると、活躍できるポジションが見えてくることが多い。
実際、当初ドライバー5名の採用予定だった運送会社が、業務の見直しによって最終的に10名の採用へと拡大した事例もある。人材が特別優秀だったからではなく、役割の再設計によって活躍できる領域が広がったためである。スタートラインの設計とは、「どんな人材を採るか」ではなく、「どう受け入れる準備を整えるか」という、企業側の取り組みなのである。
来日前の教育|国選びと現地教育が土台をつくる
外国人ドライバー育成の最初の局面は、「どの国から、どんな人材を採るのか」という選定である。
ここでの判断が、その後の運転技術・定着率・現場負荷を大きく左右する。
・なぜ「国選び」が定着を分けるのか
外国人ドライバーの採用先としてよく候補に挙がるのが、ベトナム・インドネシア・ネパール・ミャンマーの4ヶ国である。
この4ヶ国は「募集・将来性」「運転適性とレベル」「宗教」「日本語との相性」という観点で見ると、それぞれ大きく異なる特性を持つ。

<・募集・将来性>
現在、特定技能で働く外国人のうち最も多いのはベトナムだが、その構成比は縮小傾向だ。2022年末には全体の約6割を占めていたが、2025年末には約42%まで落ち込んでいる。
というのも、自国の経済成長で賃金が上がり、日本との賃金差が縮まってきたためだ。実際、ベトナム国内のドライバーの月収は10〜15万円ほどであり、ここまで来ると、わざわざ日本へ出稼ぎに出るメリットは薄れつつある。
次に多いのがインドネシアで、2025年末時点で全体の約23%を占める。半年で約1万7千人増と国籍別で最も伸びており、人口約2.8億人・平均年齢29歳と若い労働力が豊富なため、現時点では候補者が集まりやすい。
ただし、経済発展と所得の上昇が進めば、ベトナムと同じように先細る可能性は否定できない。実際、すでに都市部よりも地方やジャワ島以外から候補者を集める動きも見られる。
ミャンマーは徴兵制の影響で就労そのものが不安定だ。
対してネパールは、人口約3,000万人のうち約800万人が国外へ出稼ぎに出ている出稼ぎ大国であり、内陸国で国土の約7割が山岳地帯という地理から自国内で産業を生み出しにくく、今後も海外就労者が大きく減る可能性は低い。
<・運転適性とレベル>
ここでは、日本との運転環境の相性、とりわけ「ハンドル位置」と、その国にトラックドライバーの経験者が多いかどうかが見るべきポイントになる。
4ヶ国のうち、日本と同じ右ハンドル・左側通行なのはネパールとインドネシアで、運転環境への適応はしやすい。ただし、両国の事情は大きく異なる。
ネパールは物流の多くをトラック輸送に依存しているためトラック経験者が多く、山道や未舗装路を走り慣れていることから、実践的な技術を持つ人材が多い。
対してインドネシアは、右ハンドルという相性の良さはあるものの、そもそもトラック経験者が少なく、お金で免許が取得できてしまう実態もあるため、経験の質を個別に見極める必要がある。
<・宗教>
宗教もドライバーとして就労する場合は特に現場運営に直結する。
たとえばインドネシアで多数を占めるイスラム教は、1日5回の礼拝や断食を伴うため、長時間運転や荷役のあるドライバー職との相性に課題があり、業務と折り合わなければ早期離職にもつながる。
とりわけラマダン期間中は、日中の飲食を断つことで集中力や体力が低下しやすく、長時間の運転においては事故リスクが高まる点にも注意が必要である。
一方、ミャンマーやベトナムに多い仏教はもちろん、ネパールに多いヒンドゥー教も食事制限(牛肉不可)程度で、業務への支障はほぼない。
<・日本語との相性>
ネパール語やミャンマー語は日本語と語順が同じため、文法を理解しやすく、日本語の習得がスムーズに進みやすい。
一方ベトナム語は、声調が強く、文法構造も日本語と異なるため、習得に時間がかかりやすい。
重要なのは、今まさに就労者が増えている国に飛びつくのではなく、これらの観点から自社に合う国を見極めることである。
「なぜその国なのか」を、自社が紹介しやすい国のポジショントークとしてではなく、フラットに説明できる業者は多くない。
耳触りのよい説明で特定の国を勧める相手ではなく、各国の強みと弱みを公平に示したうえで「なぜその国を勧めるのか」を筋道立てて説明できるパートナーを選ぶことが、国選びを誤らないための前提となる。

来日前教育が「免許取得」と「安全」を決める
外国人がドライバーとして就労するには、日本の運転免許を取得する必要がある。その方法は大きく二つある。
一つは、日本の教習所に通って取得するルート。もう一つは、母国で取得済みの運転免許を日本の免許に切り替える「外国免許切替(外免切替)」のルートである。
教習所ルートは、確実性の高さが利点だが、費用は1人あたり30〜40万円。
一方の外免切替は、受験料が数千円程度と費用を抑えられるため、複数人を採用する企業にとっては現実的な選択肢となる。
ただし、こちらは相応の事前準備が前提となる。外免切替は2025年10月から大幅に厳格化され、事前対策なしの一発合格は、もはや不可能に近い。
しかも特定技能ドライバーは、入国後の限られた在留期間内に合格しなければ、帰国を余儀なくされるリスクを負う。
ただし忘れてはならないのは、外免切替はあくまで「入口」にすぎないという点だ。
本当のゴールは免許取得ではなく、日本の公道を無事故で走り続けること。そしてこれは、免許試験の対策だけでは到底たどり着けない。
だからこそ、来日後にゼロから学ぶのではなく、母国にいる段階で日本式の運転を体系的に習得しておくことが成否を分ける。
私たちニホントは、ネパール現地に日本人の教習指導員を配置し、外免切替対策はもちろんのこと、日本の公道を安全に走り切るための約8ヶ月間の教育カリキュラムを構築している。
日本独自の安全確認の作法や車間距離の取り方を、座学と実技の両面で入国前に固める。「日本流」の運転基盤を母国で築いておくことが、スムーズな免許取得と、その先の安全運転の土台となる。

来日後の教育|継続教育が定着と安全運転を支える
来日前教育で土台をつくっても、来日後の継続教育がなければ戦力として根付かない。
・「逆戻り」現象を、添乗指導で防ぐ
現場で見えてきた重要な事実がある。
外国人ドライバーは、来日前に日本式の運転教育を受けても、時間が経つにつれて母国の運転スタイルに戻ってしまう傾向がある。
安全確認の動作が省略されたり、車間距離の感覚が緩んだりする。
本人の意識の問題というより、運転行動が長年の習慣に強く左右されるためである。
この「逆戻り」を防ぐ最も有効な手段が、定期的な添乗指導である。
指導員が実際に同乗し、運転を間近で観察しながら改善点をその場でフィードバックする。座学では把握できない無意識の危険な癖やヒヤリハットの兆候を発見し、修正できる。
事故は小さなヒヤリハットの積み重ねの先に起きる。だからこそ、染みついた癖が母国仕様に戻らないように、継続的に実施する必要がある。
ニホントでは、交通心理士の資格を持ち約17年間運転教育に携わってきた指導員が、雇用期間中3ヶ月に1回の頻度で添乗指導とカウンセリングを実施している。
こうした取り組みを続ける登録支援機関は、ほとんどゼロである。
・「紹介できること」と「育てられること」は別物である
特定技能制度では、受け入れ企業に10項目の「義務的支援」が課せられ、多くの企業はこれを「登録支援機関」に委託している。
月額は1人あたり2〜5万円程度が相場である。登録支援機関は全国に約1万2000社あるが、ドライバー領域に絞ると、外国人理解・免許制度・運転教育の三つを一貫して担える機関はまだ限られている。
ここで強調したいのは、「人を紹介できること」と「ドライバーとして育てられること」は、まったく別物だという点である。
義務的支援を満たすだけの機関と、運転教育まで踏み込んで継続的に伴走する機関とでは、定着率と安全運転の質は大きく変わる。
受入を検討する企業には、紹介実績だけでなく「免許取得の先にある育成体制」を備えているかを確認してほしい。
長期視点での育成|「点の採用」から「線の育成」へ
外国人ドライバー育成を長期で捉えると、もう一つの可能性が広がる。
・倉庫からドライバーへ、最長8年の育成
2026年1月の閣議決定により、「物流倉庫関連業務」が外国人材受け入れ制度(育成就労・特定技能)の対象分野に追加された。これにより、「いきなりドライバーとして採用する」だけでなく、倉庫業務から受け入れて育成しながらドライバーへ登用するという道が開けたことになる。
最初の3年間は育成就労として倉庫作業に従事させ、その間に日本語能力の向上と運転免許の取得を進め、その後の5年間を特定技能のドライバーとして登用する。
育成就労3年+特定技能1号5年で、同一人材を最長8年間継続雇用できる計算になる。

・短期の穴埋めから、戦力の育成へ
この発想の本質は、「点の採用」から「線の育成」への転換である。短期的に即戦力を確保するのではなく、時間をかけて育てる前提で人材を確保する。
倉庫で日本の業務文化と日本語に慣れてもらってからドライバーへ登用すれば、来日直後の単独乗務リスクや事故リスクも大きく下げられる。
人を「点」で消費するのではなく、「線」で育て上げる。この視点こそが、外国人ドライバーを一過性の労働力ではなく、中長期的に現場を支える戦力へと変える。
教育の質が、日本の物流の未来を決める
外国人ドライバー採用は、もはや「やるか、やらないか」を議論する段階を過ぎている。
受け入れ体制が整った企業から順に、人材確保の優位性を築き始めている。本質的に問われているのは、「どう受け入れ、どう育てるか」である。
採用は「マッチング」ではなく「スタートライン設計」であり、その設計には来日前と来日後、両軸の育成が欠かせない。
来日前の教育で日本式運転と業務への適応をつくり、来日後の継続教育で定着と安全運転を支える。
さらに倉庫からの登用といった長期スキームを組み合わせれば、最長8年にわたる「線の育成」も可能になる。この育成を疎かにしたまま採用だけが先行すれば、事故や離職が頻発し、外国人ドライバー受入そのものへの不信が業界に広がりかねない。
私たちニホントは、ネパール現地での運転教育から、入国後の外免切替対策、雇用期間を通じた添乗指導までを一気通貫で担う、ドライバー育成に特化した登録支援機関である。すでに約150名の内定実績を重ねてきた。
紹介して終わりではなく、現場で安全に長く走り続けられる人材を育てることに価値を置いている。

この記事の作者
民田 壮
株式会社ニホント セールス/マーケティング











