物流塾

効率化と品質向上を目指す構内物流標準化マニュアル 第12回~工場内物流ツールの標準化

物流ツールばらつきに伴うムダ


これまで物流作業の標準化について、機能ごとに解説してきた。従来、物流作業は標準化されることなく、発生の都度それぞれの作業者が自己流で実施してきた経緯がある。それを標準化することで、物流品質と生産性の両面で大きな向上が実現される。
一方で、作業手順以外にも「バラバラで管理が不十分」な領域が存在する。それが「物流ツール」だ。
物流ツールが標準化されていないことにより、工場内ではさまざまなムダが発生している(図1)。
これらのムダを顕在化させ、ツールの標準化を進めることで工場全体の効率化に寄与したい。

日本の物流全体の生産性が低い大きな要因として「標準化の遅れ」が指摘されているが、その多くは物流ツールの標準化の遅れに起因している。
そこで今回は、その中でも最も重要となる「荷姿」について考えていきたい。
まず、荷姿が標準化されていないことによる代表的な3つのムダを確認しよう。


(1)保管効率低下のムダ
荷姿がバラバラだと積み重ね(段積み)が困難になり、並べた際にも余計な隙間が発生する。
容器体系が標準化されていれば安全に積み重ねができ、保管場の上方空間を有効活用できるのはもちろん、デッドスペースも解消される。
一度、倉庫全体の容積に対する「保管物そのものの総容積」の比率を計算してみてほしい。
いかに空間をムダにしているかが実感できるはずだ。
大半の会社において、その実質利用率は一桁パーセントにとどまっているのが実情である。


(2)在庫のムダ
荷姿を構成する重要要素に、容器内の収容数(SNP:Standard Number of Package)がある。
現場ではこのSNPが大きすぎる傾向が目立つ。要因としては、SNPの決定ルールが明確になっていないことが挙げられる。
結果として、当面使わない部品までまとめて保管することになり、過剰在庫につながってしまうのだ。


(3)輸送効率低下のムダ
保管効率と同様に深刻なのが輸送効率の低下だ。
トラック荷台の上で荷物同士が重ならない、荷物間に無駄な隙間ができる、あるいは荷姿充填率が管理されていないといった理由から、トラックの積載率が上がらず、輸送コストを悪化させてしまう。


荷姿の標準化


荷姿を標準化するためには、明確な「荷姿設定基準」を作成する必要がある。
手順として鉄則となるのは、第一に「SNPを決めること」、第二に「容器を決めること」だ。
世の中の多くの会社がこれとは逆の手順、つまり「まず容器を決めて、そこに入るだけ入れる」という方法をとっている。
これでは在庫を膨らませるリスクを免れない。まずはSNPを最初に決めるべきなのだ。
したがって、基準の1つ目は「SNPの決定ルール」となる(図2)。

おすすめしたいのが「1日の使用量の4分の1」というルールだ。
この根拠は、小ロット生産を推進し、1日に同一製品を4回に分けて(4分割で)生産する平準化の考え方に基づいている。

2つ目は「標準容器の策定」だ(図3)。容器の種類は可能な限り絞り込むことが望ましい。


少なくとも容器底面の寸法(幅×奥行)の種類は数パターンに限定したい。
底面サイズが統一・共通化されていれば、異種の容器同士であっても効率的な積み重ねが可能になるからだ。
また、標準容器の仕様基準もあらかじめ定めておきたい。代表的な基準例を以下に挙げる。


(1)空(から)時に圧縮できること
コンビニエンスストアの店舗脇に、コンパクトに折りたたまれたコンテナが積み上げられている光景を見たことがあるだろう。
工場でも同様の配慮が必要だ。容器が空の状態のときは圧縮できるようにしたい。
方式としては、折りたたみ方式や、紙コップのように重ね込めるネスティング方式がある。


(2) 柱タイプ容器の積み重ねはネスティングとする

四方に支柱が立った「柱タイプ容器」と呼ばれるものがある。
この柱は上段の荷重を支える機能を持つが、重ね方をネスティングタイプ(入れ子式)にしておくことで、保管時や輸送時に隣接する容器との間の無駄なスペースを削減できる(図4)。

荷姿標準化の効果


荷姿を標準化することで、保管効率や輸送効率は劇的に向上する。
また、見落とされがちな容器間の隙間(デッドスペース)を極小化できるほか、SNPを適切にコントロールすることで在庫削減にも直結する。
普段は意外と見過ごされがちな荷姿ではあるが、ぜひこの機会に注目し、工場全体の標準化に取り組んでいただきたい。


【第12回まとめ】
1 物流ツールの非標準化は、工場内に多様なムダを発生させる要因となる
2 荷姿の不備は「保管効率低下」「過剰在庫」「輸送効率低下」の3大悪を引き起こす
3 荷姿標準化には「(1)SNPの決定 → (2)容器の選定」の正しい順番と基準づくりが不可欠
4 標準容器の底面サイズ統一や、空箱時の圧縮性など、運用の細部までルール化することが成功の鍵

この記事の作者
仙石 惠一

合同会社Kein物流改善研究所 代表社員