実行型WMSから「考える物流基盤」へ AIプラットフォーム「EPG AURA」で進化する次世代物流システム

物流業界はいま、大きな変化の中にある。
慢性的な人手不足、取扱商品の増加やSKUの細分化、短納期化への要求など、物流現場が対応しなければならない課題は年々増えている。
加えて、急激な需要変動、入荷遅延、設備トラブル、交通渋滞など、日々発生する予測不可能な事象への対応も必要である。
これまでの倉庫管理システム(WMS)は、「決められたルールに従って正確に実行する」ことを中心に進化してきた。しかし、物流の複雑化につれ、正確な実行力だけでは課題解決への対応は難しい。
例えば、予定していた入荷が遅れれば、その影響は荷受けだけでなく、格納、補充、ピッキング、出荷にも及ぶ。出荷量が急に増えれば、作業者の配置やピッキングの優先順位、設備の使い方など、状況に応じた判断が必要である。
こうした判断の多くは、現場の責任者や経験豊富な作業者の知識と経験によって支えられてきた。
今後は、こうした現場の判断をAIが支援することで、物流システムは単に決められた処理を実行するだけでなく、さまざまな情報から「いま現場で何が起きているのかをより深く捉え、状況に応じた判断を支援できるようになる」と考えている。
そのために重要なのは、AIそのものだけではない。AIの判断結果を実際の物流現場で確実に実行する「AIへの適応性が高い実行管理システム」が重要になっている
ドイツを拠点とするEhrhardt + Partner Group(EPG)は、35年以上にわたり、世界1,600社以上の企業に物流ソリューションを提供してきた。その中核を担うのが倉庫管理システム「LFSWM」である。
【LFSWM : LAGER FÜHRUNGS SYSTEM / WAREHOUSE MANAGEMENT】
そして現在、EPGではLFSWMを中心とした実行基盤にAIを組み合わせ、物流システムを新たな段階へ進化させようとしている。そのためのAIプラットフォームが「EPG AURA」である。
オペレーションに根ざしたLFSWM
LFSWMは、単なる在庫管理システムではない。入荷、格納、補充、ピッキング、出荷、在庫管理など、倉庫運営に必要となるさまざまな機能を備え、実際の物流現場を動かす「実行基盤」として発展してきた。

図-1 LFSWMイメージ
その特徴の一つが、さまざまな業務要件に対応できるモジュール構造である。
長年の導入実績から蓄積された物流機能を標準機能として取り込み、必要な機能を選択して利用できるため、個別のカスタマイズに頼ることなく、多様な物流要件に対応することができる。

図-2 LFSWM機能例(抜粋)
もう一つの特徴が、パラメータによる業務設定機能である。
入出庫や補充の方式、ロケーション管理、ピッキングの優先順位など、物流現場のさまざまなルールをパラメータによって設定できる。

図-3 パラメータ設定による柔軟な物流業務対応
これはAIとの組み合わせを考えるうえでも重要な特徴である。
AIを導入したからLFSWMが柔軟になるのではない。LFSWMがもともと持っていた柔軟な設計思想が、AIによってさらに活かされるのである。
AIが物流データを分析し、その結果に応じて必要な設定や運用方法を提案する。こうした使い方が可能になることで、LFSWMの持つ柔軟性をさらに引き出すことができる。
EPG ONEで物流全体をつなぐ
更に物流は倉庫の中だけで完結するものではない。
入荷輸送の遅れは荷受けや格納に影響し、ピッキングの遅れは梱包や出荷に影響する。自動化設備の処理能力が低下すれば、最終的にはトラックの出発時間にも影響する。
EPGでは、LFSWMを中心に輸配送管理、要員管理、自動化設備連携、ダッシュボード、ボイスピッキングなどを連携させる「EPG ONE」というサプライチェーンソリューションを展開している。

図-4 EPG ONE
物流を構成するさまざまな要素をつなぎ、個々のイベントだけではなく、物流全体の実行状況を捉えることが狙いである。そして、この「物流全体を捉える」という考え方が、AIを活用するうえでも重要になる。
AURAが加える「知能」
LFSWMやEPG ONEが物流を「確実に実行する」ための基盤だとすれば、EPG AURAはその上に「知能」を加える役割を担う。
AURAは、単にWMSにAI機能を追加するというものではない。
「今起きていることを把握し、このまま進むと発生するであろう問題を把握し、どのような対応を取るべきなのか」を提示し、意思決定を支援することを目指している。

例えば、WMSのデータだけでは「作業が遅れている」という結果しか分からない場合でも、カメラ映像や帳票などの情報を組み合わせれば、「なぜ遅れているのか」という原因に近づくことができる。
AURAは、こうしたさまざまな情報を物流の実行データと組み合わせ、現場の状況をより広く捉えるための基盤となる。
AIが「見えなかった現場」を捉える
AURAの代表的な機能の一つが、Intelligent Video Analytics(IVA)である。

図-6 AURA IVA
倉庫に設置されたカメラ映像をAIで分析することで、特定エリアでの異常な滞留、作業者や荷物の集中、通常とは異なる動線などを検知する。
WMSのデータに異常が現れてから対応するのではなく、現場の変化を早い段階で把握する。これは、物流システムに新たな「認識」のレイヤーを加えるものといえる。
もう一つの例が、Intelligent Document Processing(IDP)である。
物流現場には、納品書、送り状、通関関連書類など、さまざまな紙の情報が存在する。
IDPでは、AIを利用して文書から必要な情報を抽出し、物流業務で利用できるデータへ変換する。
これにより、紙の情報を人が確認して入力する作業を減らし、情報が発生してから物流業務に反映されるまでの時間を短縮することができる。
AIが「最適な方法」を考える
物流では、限られたスペースをどのように利用するかも重要である。
商品をどの向きに置くのか、どの商品を一緒に積むのか、重量をどう配分するのかなど、さまざまな条件を考慮する必要がある。
AURAのSpace Calculatorは、3Dパッキング技術とAIを組み合わせ、商品のサイズや重量、積載条件などを考慮して、より効率的なローディング方法を算出する。
単に「荷室に入るかどうか」ではなく、限られたスペースを有効に利用し、梱包資材の削減や輸送効率の向上につなげることを目的としている。
「次に何をすべきか」を支援する
AIの価値は、問題を発見することだけではない。
例えば、急に出荷量が増えた場合、作業者を応援に回すのか、ピッキングの優先順位を変えるのか、設備の利用方法を変えるのかなど、複数の選択肢が考えられる。
これまで、こうした判断は経験豊富な物流責任者に委ねられてきた。
AURAでは、さまざまなデータを組み合わせて状況を把握し、次に取るべき行動を提案することを目指している。
AIが人に代わってすべてを決めるのではなく、人がより良い判断を行うための情報を提供し、その判断を実行につなげる。
ここに、物流におけるAI活用の大きな可能性がある。
LFSWMの設計思想がAIによってさらに活きる
AURAとLFSWMの組み合わせを考えるうえで、特に注目したいのがIntelligent Configuration Manager(ICM)である。
LFSWMでは、物流業務の多くをパラメータ設定によって柔軟に変更できる。
例えば、新しい荷主や商品群が追加される場合、保管方法、補充方式、ピッキングルールなどを検討し、システムに設定する必要がある。従来は、物流業務を理解した担当者が要件を整理し、それをシステムの設定に落とし込んでいた。
ICMでは、こうしたシステム設定の領域にAIを活用する。
業務上の要求や物流データをもとに、必要となる設定をAIが支援することで、システムをより柔軟かつ効率的に活用できるようにする。
ここでは、AIがLFSWMのソースコードを書き換えるわけではない。
LFSWMがもともと持っているモジュール構造とパラメータ設定の仕組みを活用し、AIによって設定変更をより簡単かつ高度に行えるようにするのである。
つまり、「AIによってLFSWMが柔軟になる」のではなく、
「LFSWMがもともと持っていた柔軟性を、AIによってさらに引き出す」。
これが、LFSWMとAURAを組み合わせるうえでの重要な考え方である。
「実行」と「知能」の融合へ
これまでWMSは、物流現場を正確に動かす「実行」のためのシステムとして発展してきた。これからは、そこにAIによる「認識」「分析」「判断支援」が加わることで、その役割はさらに広がっていく。
LFSWMが物流を確実に実行し、EPG ONEが倉庫、輸送、設備などをつなぐ。そしてAURAが、さまざまな情報から現場の状況を捉え、より良い判断を支援する。
重要なのは、AIを導入することそのものではない。LFSWMがもともと持っていたモジュール構造やパラメータ設定といった柔軟な設計思想を、AIによってさらに活かすことである。
「実行するWMS」から「考える物流基盤」へ、LFSWMとAURAによる「実行」と「知能」の融合は、物流システムの新たな可能性を切り拓こうとしている。
EPS-Ehrhardt Partner Solutions 株式会社HP:LFSWM | EPG
問い合わせフォーム:お問い合わせはこちらまでお願いします
この記事の作者
長谷川 英世
EPS-Ehrhardt Partner Solutions 株式会社 シニアコンサルタント









