物流塾

ボーっと生きてんじゃないよ!

毎週チコちゃんに叱られて、新しい知識が増えるのが楽しみですが、日本のニュースばっかり見ていると世界や地球の事を忘れそうになります。

2月に公立学校は一斉休校、4月の連休は緊急事態宣言発令と深刻さが実感を伴わずに喧伝されていましたが、今では喉元過ぎて熱さを忘れるほど、半分日常に戻っているのが都会の風景。

でもね、世界は第二の波、第三の波で益々深刻さが増している様相です。夜間の外出禁止令や罰金制度まで出さねばならないほどの事態が続いていて、到底元には戻れない実感が蔓延しています。正に命か経済かという選択を迫られていて、アメリカ大統領選挙も優劣つけがたい接戦となっているようです。

実態を直視したら、日本政策はトンチンカンだ

売上3割減少、GDP20%ダウンも想定内の状況にあって、経済立て直しの目処が立ちません。

需要が減退する中での財政緊急支出は30兆円、事業規模では100兆円越える有効需要の押し込みは年内で終わります。来年度は税収減少に伴う緊縮財政と医療社会保障の減額算段が求められて、内需から外需期待へと向かうのでしょう。

国内需要減少を乗り越えるには、縮小均衡の技術経営で減収増益バランスを目指さねばなりません。人手不足は現役世代が親の介護影響で職を離れなければならなくなる人が30%と見込まれて、一気に加速します。機械化、ロボット化は収支採算が合わないので、即座には意思決定が出来ず、強制停止の現場が発生しそうです。

有効需要の強制力は各国でも取り組んでいますが、少し前では「お家で踊ろう、愛犬とティータイム」「効果は無いけど布マスクに400億円」「定額給付で実質賃金上昇」などの的はずれな政策が軒並み並び、今でも観光飲食業界、小規模商店街などに緊急輸血を続けている状況で、輸血を止めた後は考えていないのが明らかです。

エッセンシャルワーカーを守るために

医療と食料、社会インフラとしてのエネルギーや上下水道、ゴミ収集などの自治体活動には手当がなされていません。献身的な看護師待遇も改善されず、暮れのボーナスも危ぶまれる病院経営もニュースにならなくなりました。まさに不都合を忘れようとしているメディア、今だに祝典オリンピックをのんびり待とうとしているお祭り仲間がいるようです。

ニューノーマル、非日常とは、最悪の経済状況の中で如何にして高齢者や弱者を守り、児童生徒や学生の学ぶ権利、働く権利を確保するかという社会構成の確保にあるはずです。そのためにも基礎サービスとなるエッセンシャルワーカーの安全確保と待遇改善に政策を集中投資しなければならず、政治献金で生きてきた業界をまとめて守るために、異様な資金パイプを維持する事務局を続々と作り出す御用商人を排除しなくてはならないはずです。行政機関がハンコ廃止と目先をはぐらかせいている間に、癒着族が続々と生まれている現実を洗い出す必要があるのです。

物流・ロジスティクスの貢献と成果を今こそ果たすべき

日本の物流・ロジスティクスは世界に誇れるローコストオペレーションを実現させてきました。売上高比率5%とは、驚愕の低コストです。更に宅配の過剰サービスが不在配達問題を引き起こしましたが、「いらないのに届ける」ことが問題であり、過剰機能の合成誤謬そのものです。低賃金の物流マンが集まらないからと、高額投資のロボットで代用できるはずもなく労働需給を市場システムに任せないから、賃金も待遇改善も進まないのです。ドライバー人手不足も自家用トラックに規制緩和を開放すれば、600万台の自家用トラックが新規事業を開始できるのです。

日本の物流・ロジスティクスが反省すべきことは、理論と実績を積み上げてもなおまだ、在庫廃棄や在庫倒産を防ぎきれていないことでしょう。食品業界、アパレル業界で顕著な在庫問題は、理論を軽視した経営者をコントロールできないロジスティクス幹部の責任問題と言えます。

減収増益を果たしている花王は、販売部門の値下げコストや在庫処分を回避するための生産調整を微妙にコントロールしています。作りすぎず、売り過ぎないようにコストコントロールが効いているために、売上減少でも利益確保を可能としています。もちろん品不足という顧客不満も回避しています。

巣ごもり傾向の追い風を受けながらも絶好調なアイリスオーヤマは、製造業出身でありながら原材料素材業種にとらわれることなく、プラスチック家庭用品、鉄器調理器、家電製品、ホームセンター雑貨、健康関連でも完全国産マスク製造とあらゆる家計消費に対応するように、企業体そのものを改革し続けています。新製品だけで売上の50%を維持できるように、商品の計画的陳腐化とマーケット消費者分析を徹底しています。「売れるものを作り、売り込む」姿勢が高い顧客支持を受け続けていますが、製販物のバランスの良さも経営柔軟性を維持している秘訣に見えています。

コロナ禍を新しい社会の前提条件と見るなら、命の産業を中心に据えたニューノーマルの基盤が見え始めています。過去の遺産や慣習から離れ、未来の社会を想像するとき、時代を作り出す気概をもって産業が生まれ変わる節目だと言えるでしょう。

この記事の作者
コラム記事のライター
花房賢祐

ロジスティクストレンド株式会社

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