物流塾

複雑社会をシステムで〜モノローグ〜

〇ウィルスはどこから来たのか

 コロナ禍で世界の風景は全く変わりました。社会も経済も家庭も、そして子供たちの生活までも変わってしまいました。経済と社会も大きな転換を乗り越えている最中です。ベルリンの壁が壊された1990年代に勝利された資本主義も「本当に勝利したのか」という内省も始まっているのです。

 COVID-19と名付けられたウィルスは自然界から人間社会に侵入してきたのは確実でしょう。誰かが意図的に製造して、失敗したとは考えられず、悪意の兵器とも思えないのです。類似の呼吸器症候群を引き起こしてきたSERSやMERSと類似しているからです。

 急激な成長を目論む資本主義が、地球資源を開拓し採掘し、耕作するために自然林を伐採し尽してしまった結果、コウモリの巣がなくなり共存していたウィルスが人間社会に変異して感染が始まったのは想像できるでしょう。すでに似たような病気は牛や豚、鶏などの家畜にも多く蔓延していることからもコロナはこれからも変異を続くことでしょう。

 現代社会はVolatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性の頭文字をつづってVUCAの形容詞がつくようになりました。気候変動も社会不安も戦争も、すべての不安は突然何の前触れもなく、どこからともなく私たちの社会生活に侵入してきます。まだ未経験なのは宇宙からの侵入者なのかもしれませんが、これすら信じている人も証拠もあるのだと言われています。

 社会も生活も変化や災害不安を覚悟しながら続けなければならないでしょう。一本調子の成長や緩やかな進行など、これからはあり得ないのだと覚悟しなくてはなりません。

 もし近く新型コロナが収束したとしても、その次の自然の脅威は必ず訪れるでしょう。新たな新型コロナウィルスは必ず存在しているのです。地球や自然が悲鳴を上げている、人類は自然を制御することはできないからです。

〇どんなシステムが求められているのか

 複雑で多難な社会と時代を生きてゆくために、私たちはどんなシステムを期待しているのでしょうか。心の底には何を渇望しているのでしょうか。ビジネスや経営は激しい競争を避けて、何を追いかけてゆけば良いのでしょうか。進化や進歩に競争は必要だったかも知れません。競い合うことが、互いに磨きあうことかも知れませんが、結局は手にするものは疲弊感しかなかったのが資本主義の真の姿だったと見えてしまいました。

 安いもの速いものは、技術進化によってどんどん競争相手が登場して、誰が勝利者かは分かりません。勝利は一瞬であり、競争は必要かもしれませんが、その結果にもたらされるものは、疲弊だけしかしかありませんでした。完全競争下では利益は蒸発して淘汰されるのです。そのことが証明されているからこそ、競争戦略は同盟戦略となり、競争より共同化となり、合弁が選ばれるようになったのです。資本の力は戦わずして飲み込み、吸収する資本戦争になったのです。

 「より~~するもの」という要素分解から進む改善や改革、進歩や進化は、それらを要素還元して完成した姿はほんの一瞬であり、すぐさま再び激しい競争に巻き込まれる事態になってきたのが現代なのです。

 競争を前提とした目的セットはすでに破綻しています。ニッチも差別化もエコシステムという現代では無効です。成功すればすぐさま追随され、先行者利益は一瞬に過ぎません。それはもう世界共通であり、情報社会の結果とも言えます。そうすると独占だけが生き残り戦略となるわけですが、社会がそれを許さない法治社会になっているのです。独占しながら横暴ではない、巨人だけれどもその姿を見えないように振る舞わなければならないのです。

 その原動力となる存在目的は、まさに人類の目的でもあり、企業源泉の証明であるはずです。

 豊かな愛、時間の管理、そして命の継続。この3つが究極の存在理由であり、挑むべき目的なのです。それ以外は、誰も渇望しない。むしろ、どうでも良い脇道に過ぎないのです、だから継続することはできない。ましてや、利潤の極大化やあいまいな社会貢献などの競争目的を前提とした存続は幻影にすぎないのです。

 3つの目的を分解し展開すれば、競争を回避する有効なシステムとなるのです。

○競争回避の協調と共存戦略だけが未来を拓く

 2019年に開かれた年会費600万円のダボス会議(世界経済フォーラム)の最重要な経営課題は地球環境問題でした。企業の存続と成長のためには、異常気象、自然破壊、新しい南北問題である貧困と紛争は第1次産業に由来しており、それを回避することに携わらなければ自らの存在意義はないと主張したのでした。地球や自然、過剰な競争を回避しなければ、もうすでに悲鳴を上げている自然に人類は今ままでのその付けを払わねばならないことが提言されているのです。消費活動が自然の疲労をもたらし、地球の自然環境は衰退に向かってしまいました。海が汚染され、空気が汚れ、人類の命の危機が明らかになった、そのことをトップマネジメント達は身を持って知らしめられたのです。

 もうルールは変わり、欲望のままの消費生活は許されないのです。利潤追求のために地球資源を採掘することも止めなければならないのです。競争から共存するための調和戦略、棲み分けの余地を作り出すことが求められています。むしろ制限や制約の中で、ルールの中で最高のパフォーマンスを出せるプロフェッショナルが求められているのです。

 バランス、調和、共存、相互扶助、時代は資本主義一辺倒から社会主義、共産主義社会への移行が始まっていると見るのでしょう。映画に登場する未来社会はビッグダディによる監視社会であり、競争排除の農園生活のようなものが楽園とみなされてきました。SF社会は未来を読み通せる作家のイメージ通りに実現してきたものです。

 競争タブーの時代が訪れていると考えると、システム設計は意外な盲点があることに気づくでしょう。差別化、ニッチ、競争はすべて「より優れたシステム」を必要としてきましたが、「調和と共存」では優れた指標とは安定と分散であることに気づくのではないでしょうか。

 自律的なシステムに愛と時間と健康を組み入れたとき、AIは人類と共存できるし、ロボットは私たちの生活を変えてくれるでしょう。産業界でもAIと自動化は巨大組織を無用として、都市の集中から地域への分散化へ向かう原動力にもなるのです。高く積むより広く展開させる分散こそがこれからのシステム設計に必要なタームになりそうです。

この記事の作者
コラム記事のライター
花房賢祐

ロジスティクストレンド株式会社 代表

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