物流塾

これからのビジネスは競争理論では成り立たない

競争から非競争、共創時代に向かって

 コロナ禍がもたらした反省は、資本主義の選択と集中というカネの稼ぎ方だった。規模の経済を追求すればするほど、人々は都市化を当然のように許容して通勤電車も狭い家も高層化していれば良しとしてきた。これからしばらく10年以上は密を避けなければならないだろう。安宅氏が言うような風の谷を目指して、開疎化がキーワードになるだろう。カネより命が大切だからだ。そして誰しも親のことを心配に思うからだ。守銭奴も親の恩だけは忘れてはいけないものだ。

 選択と集中は競争が前提になっている。アリスが赤い女王から云われたように、同じところに留まるには2倍の速さで走らねばならない。狐もうさぎもとにかく速く走らねばならないのだ。レッドクイーンは競争を是として、立ち向かえと諭してきた。

 果たしてそうか。昭和の時代を席巻したのは新商品のラッシュだった、令和の時代のデフレでは各社は新規事業に向かい、自身の手足を切り落とし、ガラケーは競争の無意味さにようやく気づいたが、手遅れだった。新商品も新規事業も既存事業と競争の延長線にあった。アリスは2倍走る覚悟をしていたが、考えてみれば空を飛べばよかったのだ。世界中で数百万台の自動車を作れる能力は、証券市場での時価総額はテスラに負ける。テスラはまだ満足な自動車は10万台も作ってはいないが、その能力は空を飛ぶだろうし、もっと驚きの文明の利器をもたらすだろうと期待されているから高いのだ。テスラは競争せず、パートナーと共に共創しながら時代を開いてゆくだろう。未来を予測するのではなく、リアルオプションで未来を組み立ててゆくのだ。

競争のない時代が本当にやってくるのか

 ルールが変わって勝ったつもりが崖っぷちに残されて、後ろに下がることもできない時代が今だろう。明らかにオーバーストアだった飲食サービスが営業時間の制限から、7割経営を押し付けられて残れるはずがない。業種を変えねば未来はないのに、給付金で一時しのぎの甘い水を飲んだら最後だ。疲れ切った地球資源を使い尽くすことはもうやめたい。エネルギーは命に必要だが、命には地球が必要だ。水と空気が汚れていては、命を続けることも難しくなる、そのことが目に見えるようになってきている。だからSDGsが宣言されて、勝ち続けるのではなく生き続けることの大切さが云われているのだ。

 競争のない社会とはブルーオーシャンを意味しているのではない。あれは市場で多くを占めている満足していない顧客層60%に注目しただけだ。熱心なファンは10%はいるだろう、どうでも良いやと手近なやり取りをするのは30%はいるだろう。そして浮気症の顧客が30%以上いるはずで、そんな非満足げな客に着目したのがブルーオーシャンシフトだった。それでも衝撃的だった。競争していて脇目を見なかったために抜け落ちてゆく顧客がいたからだ。

 これからは非競争の時代でなければ、地球が持たない。密を避けて開疎化を目指さねばならないのだから、競争ではなく共同しなくてはなならない。この価値観は10年以上続くだろう。都市化は地方へ分散することで避けられるが、競争は集中することだからダメなのだ。集中すると停止せざるを得なくなる。自然が、見えないチカラがきっとそうさせる、これからずっと。

 競争しないで生き続けるには共存しかない。補いあい、支え合い、ムダのない空間を作り出すためにも空からの視点を保つ必要がある。社会が、政治が、文化が、全部が移行しているのが今なのだ、と思えば新しい知恵と方策が見えてくるはずだ。

この記事の作者
コラム記事のライター
花房賢祐

ロジスティクストレンド株式会社

お問い合せ

コラムやセミナーなど、お気軽にお問い合せください

お問い合せ