4M管理に取り組もう(下) ~物流ではあまり知られていない現場管理手法~
物流4Mの「もの」
物流4Mの中で「もの」について考えてみよう。物流工程でよく使われる代表的なものといえば段ボールや容器、パレットなどが挙げられる。梱包に使う段ボールは発注や在庫管理が重要。時々発注過多で劣化してしまっている段ボールを見かける。このような管理をしていると会社の棚卸資産を劣化させてしまわないか心配になる。注意が必要だ。製品在庫とともに資材在庫管理もしっかりと行っていきたい。
さてこの段ボール等の資材についても変化点管理が重要になってくる。新旧品の切り替えが発生するがその管理ができていないと何かと不都合が発生する可能性がある。最悪の場合切り替えた後に旧品を出荷してしまうことが考えられる。包装資材は出荷製品の外観でもあり見た目が大切。その見た目を損ねてしまうことは絶対に避けなければならない。さらに物流工程で重要な「もの」は製品そのものだ。自社の製品、預かり品などの製品の保管管理を行っているので、そのものの管理について考えなければならない。
顧客からの寄託品は顧客の所有物なのでそれに損害を与えることは許されない。受け入れた数量、出庫した数量をきちんと把握し在庫を適正に保つことが基本だ。在庫に異常があれば顧客に間髪をいれずに報告をすることも忘れてはならない。顧客としては外部倉庫のように、自分の会社から離れたところで在庫管理を行うということに対してある意味不安なところがあるだろう。
在庫は消費者に売りを保証するために必要。売り逃しを避けるためにも適正な在庫管理を行い、市場動向に応じてものの出方が多ければ顧客にフィードバックする必要がある。
顧客からの預かり製品が変更になったときには要注意だ。新製品の立ち上げに伴い打ち切り製品が出てくる。それを出庫してしまうと大変なことになる。だからこそこのように新製品の立ち上げ、旧製品の打ち切り時には4M変更管理が重要になるのである。製品入れ替え時にはどのような仕事の仕方をするのか、きちんとしたルール決めが求められる。
物流設備の留意点
次に三つ目のMである「設備」について考えていこう。物流における設備にはどのようなものがあるだろうか。やはり代表選手はトラックだろう。輸送設備としては圧倒的にシェアを占めるのがこのトラックだ。設備は使ってなんぼのものだ。365日、24時間動かすことでその本来持つ力を発揮できる。
トラックにしてもフォークリフトにしても物流設備として重要機械であることに変わりはない。常に良好な状態を保ちフル稼働させることが望ましい。そのために最初にやらなければいけないことは事前メンテナンスだろう。トラックでもフォークリフトでも他の機械でも日々の始業点検や月次点検は欠かすことのできないアイテムだ。
しかしながらこの大切さはわかってはいても実際にできていない会社もあるかもしれない。他の業務でも同じかもしれないが、目先で考えるとすぐに悪影響が出ない仕事については手を抜くことがある。しかしこれが積もり積もるとある日突然「ドカ停」が起きる可能性がある。ドカ停とは長時間設備が停止してしまう現象のことで、大抵重大な設備故障が原因だ。
トラックやフォークリフトの場合は点検業務が法令で義務づけられているので手を抜くことは考えづらいが、他の機械では手抜きをしている可能性は否定できない。この点は一度振り返ってみた方がよいだろう。
設備を常に良好な状態に保つとともに常時稼働させることが重要。何故なら設備を休ませているということは資産を有効活用せずに眠らせていることと同様だからだ。
タクシーは車検や点検で稼働できない場合を除き、原則毎日、24時間稼働させるようにしているという。タクシーも物流の一つ。それを習って私たちのように「人以外」を扱う物流でも設備稼働率を極限まで向上させたい。
そこで常日頃から設備の稼働状況を把握し、資産の有効な活用度について意識しておくことが望ましい。その時の稼働率は以下の算式で考えてみたらいかがだろう。
◆設備稼働率=設備稼働時間÷8760時間
(8760時間=365日×24時間)
もう一つ物流4Mの設備の分野で考えておきたい項目が「安全」だ。物流設備を扱う過程で留意すべき安全についてである。物流に関する設備には危険が伴いがち。そこでその設備を扱う時に気を付けなければならないポイントについて整理しておくとよい。例えば以下のようなことを考えてみてはどうだろう。
・フォークリフト扱い時の安全保護具の基準
・トラック荷積みの際の標準作業
・フォークリフト前進走行時の安全基準
・トレーラーバック時の留意点
その他安全関係については念には念を入れて検討しておくことが必要だ。
物流業務の方法
もうひとつの物流4M、「方法」について考えていこう。物流4Mにおける方法とは物流業務のやり方ということになる。ものを輸送する時に「モード」と呼ばれるものがある。これは輸送手段ともいえるが要はトラックで運ぶのか、船舶で運ぶのか、あるいは航空機なのか鉄道なのかといったこと。この輸送手段がひとつの方法だ。
また、この輸送モードによって荷姿が変わってくる。揺れが大きいトラックとそうではない航空機とでは必然的に荷姿仕様が異なる。お気づきのことと思うが、この荷姿も物流4Mにおける方法だと考えられる。どのように製品を保護するのか、そのためにどのような資材を活用するのか、箱内の製品の並べ方はどうするか、入数をどうするかなど、すべて物流業務を行うための方法であるわけだ。
構内で行う運搬作業や入出庫作業についてもそのやり方は物流4Mの方法にあたる。
これらの物流作業についてはいつも申し上げていることだが「標準化」が重要なキーになる。方法についてはこの「標準化」に力点を置いて管理していくことが望ましいといえるだろう。物流は往々にして標準化が苦手のようだ。しかしその影響は効率や品質に表れてくる。残念ながら製造業に比べるとそれらが劣っているといわざるを得ない。だからこそ物流にとって4Mにおける方法の管理は大切なのだ。仕事の方法が変更になった時には人が変更になった時と同様に間違いが発生しやすいと考えられる。そこで仕事が変更になった時にはその内容を担当者に周知することが求められる。物流4Mである人、もの、設備、方法については「4M変更時ルール」をきっちりと確立し、それをドキュメント化する必要がある。そしてそのドキュメント化されたルールブックを社員全員に所持させ、内容を必ず守るように教育していこう。できれば朝礼時などを活用し、その内容を確認していくことも効果的だろう。
物流業務が高効率、高品質を維持していくためにも、ぜひ物流4M管理をしっかりと実行してゆこう。
この記事の作者
仙石 惠一
・物流改革請負人。ロジスティクス・コンサルタント。物流専門の社会保険労務士。
・自動車メーカーでサプライチェーン構築や新工場物流設計、物流人財育成プログラム構築などを経験。
・著書 「みるみる効果が上がる! 製造業の輸送改善~物流コストを30%削減~」
・日刊工業新聞、月刊工場管理、月刊プレス技術など連載多数。
http://www.keinlogi.jp/ 無料メルマガ 「会社収益がみるみる向上する!1分でわかる物流コスト改善のツボ」 https://www.mag2.com/m/0001069860