物流塾

物流ロボティクスはブームになるか?

人手不足対策としてのロボット設備投資は有効なのか?

 物流現場のワーカーが集まらないという。募集時給がどんどん上がって1100円を越えたらしい(千葉県湾岸地区情報)、それでも応募が少なく、更に定着も厳しいらしい。そこで頼りにしたいのが物流ロボティクスであるが、

  • 設備投資総額がいくらになるのか、
  • それは回収計算が成り立つのか、
  • ロボットと共存する要員数は何人なのか、
  • いつから導入できるのか、
  • 即応できるベンダーはどこにいるのか

 多くの導入課題が集積しており、スッキリと打ち手が整理できているわけではない。

物流最新ニュースやロボット導入事例紹介で登場する最新の物流施設は、初めからロボティクスを組み込んでおり、自動倉庫よりは安い!、大型ソーターよりは短期導入可能、そもそも新築設計での投資回収計算に組み込まれている、というのが実態らしく、アドオン後付導入では多くの前提条件が重なり、一筋縄ではいかないようだ。

 物流現場ワーカー不足は頻発しており、単純作業はロボティクスに頼りたいが、いかんせんトラックやフォークリフトのような自由度があるわけではなく、購入即日稼働というわけにはいかない。ましてや導入にあたっては、巨額な投資計画が必要であり、決算前の途中段階で資金計画を組むには無理がある。

作業要員募集経費や広告宣伝予算にも苦戦していながら、いきなり桁違いの設備投資としてロボット購入予算を計上するのは話を通しずらい。そこで、とりあえずレンタルサービスや実証実験という名の1セット部分導入が話題になっているのだ。小さく初めて効果確認ができてから、というのでは随分と息の長い進行になってしまう。

設備投資なのか、要員人件費予算拡大なのか?

 ワーカー時給が高騰しているとはいえ、時給換算で最大1500円なら日給でも1万円強ですむ。果たしてロボティクス導入であれば、1台数百万円、減価償却で2%としても1基あたりで数十万円の導入経費に相当する。この計算は妥当なのか、どんな公式、計算式なら採算が合うのか、本当に費用対効果が検証できるものか。到底現場リーダーレベルでは判断がつかない、しかも毎年の運営コスト評価で生産性を判断されるのなら、現場からの要望で多額の設備投資を願い出ることはできない。

募集条件の時給を上げることもできず、設備投資も計算できない、そんな中でのトピックスにロボットが上がっているのが実態ではないか。

 ゼロベースで考え直してみると良いだろう。年間の運営費用とこれから先、3年間の投資回収計算を行う必要があり、これは人件費の伸びと代替設備投資の計算である。ロボットという巨額設備投資は減価償却計算が欠かせない。少なくとも導入すれば、5年から7年の期間で償却計算、すなわち費用対効果を試算しなくてはならないから、月額2%として5年間の計算式が必要になるだろう。

5年後の運営イメージが描けるかどうか。中期の運用計画が必要なのだ

 令和の時代が始まり景気の底を打ったかのように感じるが、実際にはどうか。消費増税の影響もあるだろうし、関東から東北にかけての台風被害も予想を越えるものになっており、サプライチェインへの影響も読み切れていない。中央高速、鉄道の復旧も遅れており、景気への悪影響が計り知れないところにある。来年に控えた東京オリンピックというお祭り狂宴も僅かな期間の盛り上がりで終わりそうである。

 祭りのあと、という寂しさは世界中のオリンピックで経験している喪失なのだ。
 物流クライシスと命名されたトラックドライバー不足による物流停滞は、景気と人口減少の影響が年々効いてくるはずであり、5年後には共同物流推進や生産消費量の減少が目立つようになるはずで、筆者はクライシスは解消されると踏んでいる。

 このようなシナリオを描き、妥当性を検証し、多くの知見を交換すれば、中期の事業計画は想定範囲に収束するだろう。

物量は伸びるのか?
人手不足はすべての産業でも継続してゆくのか?
投資判断はどこまでが許容されるのか?

 今一度、冷静に事業の推移を想像巡らす必要がありそうである。

 

この記事の作者
コラム記事のライター
花房陵

ロジスティクス トレンド㈱

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