物流塾

天高く馬肥ゆる秋

「秋が深まり、紅葉、観光、運動会、そして食欲の秋!」と言いたいところであるが、今年の秋は少し様子が違う。年初に始まったコロナ禍が終息せず、人々はコロナに怯え、各種イベントは中止になり、GoToトラベル、イートが始まったものの、晴れやかに秋を楽しむ気持ちにはなれない。

私も極力外出を控え、在宅でリモートワークに勤しんでいる。楽しみは家で美味しいものを食べる事ぐらい。おかげで体重は×kg増加、益々醜い体になってしまった。「天高く我肥ゆる秋」。これもコロナ禍の功罪である。

ところで、秋の味覚と言えば、リンゴ、栗、柿、ブドウ、梨、サンマ、そしてマツタケ等々、たくさんある。サンマは不漁で高級魚になってしまった。限られた水産資源の国際保護が求められる。

それでは、マツタケは? 先日デパ地下に行き、食料品のマーケットリサーチ(単なる妻の荷物持ちである)をしてきた。国産マツタケが沢山陳列されていた。ワンパック1万円、これには流石に庶民には手が出ない。せめて輸入物でもと思い隣を見ると、カナダ産と中国産が数パック、陳列されていた。国産に比べ価格は安いが、数が少ない。添付写真の右側が国産マツタケ(1万円/箱)、左側の2段がカナダ産と中国産(1,980円/パック)である。

通常、マツタケは年間800トン輸入されており、中国産が6割、米国とカナダがそれぞれ2割とのこと。ところが今年の米国産マツタケは、主要産地であるオレゴン州、ワシントン州で、山火事が発生し収穫量が激減している。しかし、中国(特に雲南省)では今年はマツタケが豊作との事、それなのになぜ店頭に並ばないのか? 

前置きはこの辺にして、ここからが物流の話である。マツタケは鮮度と風味が命である。したがって輸送方法は国際航空貨物輸送(航空機)である。国際航空貨物輸送には貨物専用機(フレーター)と旅客機貨物室(ベリー)がある。フレーター輸送は特定の空路のみであり、殆どはベリー輸送である。ところがコロナにより、現在国際旅客便の9割が運休している。航空貨物運賃も5~6倍に高騰している。中国からのマツタケ輸入量減の原因は、コロナにより航空便での輸送が困難になった為である。

中国雲南省では、これまでマツタケを食べる習慣は無かったが、日本への輸出が出来なくなった為、地元では野菜炒めの様にして、バリバリ食べているとのこと、もったいない話である。これで中国の人達がマツタケの味を覚えたら、アフターコロナになっても、マツタケが日本に安く入ってこなくなるのでは、と危惧している。

これまで何年も掛けて築いてきたグローバル・サプライチェーンが、コロナ禍で脆くも崩壊してしまった。グローバル・サプライチェーン不確実性時代の到来である。過去の実績に捉われることなく、突然起こる変化への迅速な対応力が、企業存続に求められている。

この記事の作者
コラム記事のライター
青木規明

生産ロジスティクス研究所 代表
技術士 (経営工学部門(専門分野:ロジスティクス)、総合技術監理部門)
青木規明 aokilog.lab@kch.biglobe.ne.jp

お問い合せ

コラムやセミナーなど、お気軽にお問い合せください

お問い合せ