情報は力なり!!!~私のメディア遍歴~

私のマーケティング手法
私は東海大学在職中に専門書籍の企画・編集を担当していた。その際に専門書籍の販売に苦慮した経験がある。書籍は販売価格を適正化するために、制作コストを抑える必要から発行部数の最大値を推定して最低でも1000部を出版しなければならない。しかしそれぞれの該当テーマに対して読者1000人に購買してもらえる保証はない。まずは多くの当該テーマの読者対象に知らしめる手段が必要となる。
インターネットもない時代に、私は専門書出版社としては初めてのPR誌として『科学サロン』と命名してした季刊誌を発行することにした。『科学サロン』はB5判28ページで1977年に創刊され、直販と全国主要書店での販売を展開させていただいた。『科学サロン』が専門書籍のPRに一役買ったことは言うまでもなく、科学技術知識の普及に少なからず貢献できたものと自負している。
また、私は通信技術専門書シリーズのPRのために新宿の紀伊国屋ホールで「ニューメディアフォーラム」というイベントも企画して開催した。インターネット前夜ではPR誌の発行もイベントの開催も共に情報発信の手段として大いに功を奏したことは言うまでもない。
その頃に私はマイクロメディア研究所を創設してインターネットが登場する以前から、自力開発したパソコン通信ソフト“MicroTerm”(後に“以心伝心”として商品化)を使って新聞雑誌記事データベースを検索して遊んでいた。大学から物流システムメーカーに転職することを決めた動機も、新聞雑誌記事データベースを検索した結果、物流システムに関する記事の数が年々倍増していることを確認できたからである。また転職後には知名度もない創業間もない小さいシステムメーカーとして物流ソリューションシステムをPRするために「ロジステックセミナー」と題した物流関連テーマのセミナーを企画主宰した。
物流がロジスティクスとしてその重要性が少しずつ認識されつつある時代だったので、物流関連のセミナーは物珍しさも手伝って予想以上の集客ができた。「ロジステックセミナー」は定員500名の商工会議所の国際ホールなどを借りて年1回の頻度で開催し、毎回満席であった。
その後、大規模に年1回開催していた「ロジステックセミナー」は他社でも同様なセミナーが開催されるようになったこともあり、2000年に再転職した物流システムメーカーでは、規模を縮小して「物流改革セミナー」「製造改革セミナー」と題して自社の会議室を利用して定員50名の小規模で開催し月1回のペースで暫く継続した。
セミナーによる情報発信はマーケティングには欠かせない手段ではないだろうか。
■役割を終えつつある新聞
インターネットの普及とデジタル化とペーパーレス化の進展とともに、新聞の情報媒体としての評価は低下しつつある。物流関連業界新聞としては下記をあげることができるが、いずれもインターネットで接続できるWeb化、ペーパーレス化を並行して進められている。
・「運輸新聞」週刊、運輸新聞社
・「物流ニッポン」週2回刊、物流ニッポン新聞社
・「日本海事新聞」日刊、日本海事新聞社
・「物流ウィークリー」週刊、物流産業新聞社
・「輸送新聞」週刊、輸送新聞社
・「輸送経済」週刊、輸送経済新聞社
「運輸新聞」は創刊100年を超えて継続して刊行されている物流業界新聞のレガシーである。「物流塾」を開講していままで継続できたのは、運輸新聞社の協力によるところが大きい。私は運輸新聞社に「運輸新聞」以外に年刊誌と月刊紙の創刊の企画を提案して採用していただいた。1999年12月に年刊誌「ロジスティクス情報システムガイド」(後に「ロジガイ」と改題して継続している)を創刊していただいた。さらに2000年7月には月刊紙「ロジスティクスIT」を創刊していただいた。その後、運輸新聞社の都合により2002年6月にロジスティクスIT研究所に発行元を移して2012年9月刊行の144号まで刊行を継続した。営業を任せていた個人の都合により、145号以降の発行権をロジスティクストレンド社(代表:花房陵)に事業譲渡され「Logistics Trend」と変身して刊行されたが不振の結果、2017年4月をもって廃刊になってしまった。
「ロジガイ」創刊号
「ロジスティクスIT」創刊号
「ロジスティクスIT」から変身した「Logistics Trend」
■雑誌の活用
PC、タブレット、スマートフォンがインターネットと接続できる現在、ペーパーレス化の進展とともに、印刷媒体としての雑誌の価値も次第に低下している。しかしながら、紙のページを捲って読むという動作は、人間にとって触覚センサーと視覚センサーによる二重信号伝達となり、より強い記憶効果を齎すものとして、いまだに捨てられないメディアではある。これらの雑誌も今やペーパーレス化も並行して進められ、Webやメルマガとの連携も始まっている。
物流関連雑誌としては下記のものが継続して刊行されている。
・「マテリアルフロー」月刊、流通研究社
・「流通ネットワーキング」隔月刊、日本工業出版社
https://www.nikko-pb.co.jp/user_data/r_top.php?category_id=19
・「ロジスティクス・ビジネス」月刊、ライノス・パブリケーション
・「ロジガイ」年刊、運輸新聞社
https://www.unyu.co.jp/logisticsguidebook/
「マテリアルフロー」は私が物流システム営業を始めた頃は「無人化技術」という誌名であった。物流の無人化は非現実的なので、当時の編集長には誌名の変更を迫っていたことを覚えている。
「流通ネットワーキング」は私の記憶では、流通システム開発センターのOBが創刊した月刊誌であった。私が物流システム営業をはじめた頃に新橋にあった発行元の事務所で開催されていた流通関係の勉強会に参加させていただいた。その後、数年経ってから、日本工業出版に譲渡されたが、その頃からは編集担当者と個人的にも親しくしていただいた。企画を採用していただき執筆もさせていただいた。編集担当者が変わってから暫くは縁が切れていたが、最近になって改めて企画編集委員を拝命して、執筆者の紹介をさせていただいている。
雑誌に掲載されるコンテンツとして記事と広告があるが、読者にはいずれも情報源として役立てることができる。雑誌への広告掲載は費用がかかるが、記事掲載はニュースや告知記事は費用がかからない。また、論文や報文などは原則的に執筆者に原稿料が出るので、雑誌の編集者と連携できるようになれば、執筆依頼をいただける可能性も大きくなる。マーケティング担当者は企画力と文筆力を鍛えておくべきだ。
■物流関連Webを活用しよう
紙媒体からドロップアウトして創業されたロジスティクス・パートナー社ははじめの数年間は独自に展示会とセミナーを主宰されて物流業界の活性化に寄与されていた。また、同社がWeb単独で2001年に創始された「LNews」は当時としては画期的なメディアとして注目された。「LNews」はホームページとメールマガジンの併行で展開されている。
物流関連のWebメディアとしては下記のものがあげられる。
・「LNews」ロジスティクス・パートナー、物流ニュース
・「流通ニュース」ロジスティクス・パートナー、流通ニュース
・「トラックニュース」ロジスティクス・パートナー、物流ニュース
・「LOGISTICS TODAY」LOGISTICS TODAY
・「LOGI-EVO」サムライプレス
これらのWebメディアからは物流業界に関する多くの最新情報を得ることができる。記事だけでなく、バナー広告から物流関連システム機器メーカーはじめ物流不動産などの新規情報を入手することも可能だ。Webメディアの活用は、マーケティングのためには不可欠な手段である。なかでも「LOGISTICS TODAY」はWebメディアと併せてWEBセミナーも頻繁に企画開催されているので注目してゆきたい。
■業界団体への参画
マーケティング担当者は、関連する業界団体の会員になることをお勧めする。学会や協会には多くの専門家や実務家が参加されているので、情報収集と併せて人脈形成に役立てることができる。現時点で下記のような物流関連団体があるので、内容を吟味して入会を検討されては如何だろうか。
・日本物流学会
https://www.logistics-society.jp/
・日本ロジスティクスシステム学会
・日本ロジスティクスシステム協会
・日本マテリアルハンドリング協会
・日本物流システム機器協会
・日本マテリアルフロー研究センター
・日本3PL協会
上記の学会、協会はそれぞれセミナーや会員集会を開催している。また季刊誌を刊行している団体もある。協会は法人会員を基本としているが、個人会員として加入できる協会もある。個人会員の場合は会費が安いので、それぞれの団体の会員規定を確認した上で入会を検討されたい。
■物流情報プラットフォーム構築しよう
サプライチェーンの実行系であるロジスティクス=物流は幅広く奥深い知見が必要な業務分野である。情報と知識は誰でもが共有できる人類共有の資産である。「物流塾」はもとより、ここにあげたメディア達を情報収集と情報発信の場として活用して、物流の継続的発展を進めてゆきたい。
今後の課題としては、情報収集と情報発信のために多くの該当領域のWeb等からの情報=形式知を人工知能AIによって効率的に選択収集して、Web等へ最適発信できる機能を実現することである。「物流塾」としては、情報民主主義に基づいて、誰でもが自由に情報発信して情報収集できるWeb“物流情報プラットフォーム”を構築したいと考えている。
この記事の作者

西田 光男
マイクロメディア研究所・ロジスティクスIT研究所