物流塾

宅配便料金値上げにどうしたら良いのでしょうか?

契約単価改定、 昨年から多くの問合せやコンサルティング案件がこのテーマに集中している。
Amazonの物流パートナーから佐川急便が撤退し、ヤマト運輸に大転換。その結果爆発した物量に最大手のヤマトも対処できず、総量規制や運賃値上げ交渉の結果、倍増価格を獲得したという。

当然の帰結としてAmazonはヤマトへの依存度を下げざるを得ず、中堅他社へのシェアを高め、更に自社手配というか中小事業者を組織化したり、個人事業者向けに独自の業務委託条件を構築してAmazonFLEXとして対応策を講じている。大手宅配事業者がAmazonのようなEC物流の急激な拡大に対応できずに苦戦し、更には値上げ交渉で総量規制を掛けるのは世界共通の傾向らしい。本国アメリカではUPSやFEDEXへの依存度を半分まで下げて、自社管理配送網を完全に組み立て終わったという。シェア5割がAmazonプレートを付けた配送車両での物流になっているらしい。
この流れは日本にも通じてきており、「Amazonが自社物流に転換し始めた」というキャッチーが流れているのはそのせいだ。

運んでくれない輸送契約、救済方法はなかったのか

 店舗を持たないEC事業者にとっては、物流コストこそが最大のマネジメント技術を求められる分野であるが、今までも単なる単価交渉だけで凌いできたことに遠因がある。営業マンによる自家用車配送が珍しくなかった時代、物流事業者へのアウトソーシングはコストダウンが目的であり、その全てであった。

契約条件に輸送単価や運賃条件だけを記せば交渉もなく、コストダウンが約束されて契約の不履行や蒔き直しやハードな料金交渉が起きることすら予測してこなかった。
契約がいつまでも続く夢物語と錯覚していたことに原因があり、「もうできない!」とホールドアップされるのが契約に隠れたリスクということを改めて解説したのが、2016年のオリバーハート先生であり、当時のノーベル経済学賞につながった。
 値上げの理由に「経済情勢、諸般の事情」というのがあるが、こと物流契約にはそれが表面沙汰になることはなかった。値上げの話題は業者の切り替えを意味していたからであり、Amazonと佐川急便も同様に、値上げ交渉が切り捨てにつながっていた。

宅配料金値上げの打ち手は何か

 ケース単価で300円が800円以上に改定されたのが今回の値上げ条件らしいが(個人利用の単価はもっと高い)、最大手の値上げに対して代替手段はなく、また中堅企業も追随して値上げ交渉を行い、それは社会も許容する事態となっている。もはや運賃はこれ以上下がることはなく、未来に向かって上がり続けるだろうというのが良識なのだ。

  そこで考えられる打ち手を整理すると、

  1. 物流コスト総額の6割を占める運賃を、他のコストダウンで相殺する
  2. アウトソーシングから自営物流への切替えを行い、コスト内製化を図る
    ※内製化とは管理会計上のキャッシュアウトを防ぐことでコストダウンではない
  3. 共同配送や他社負担の余地を探り、トータルコストでわずかの抑制を狙う
    ※各業界が取り組む方向であり、物流条件緩和にもつながる
  4. 配送単位での受注額を上げて、売上高コスト比率を抑制する
    ※顧客分析を行い、貢献度BCランク顧客の物流条件を緩和する
  5. 配送コストは今後上昇するだけなので、事業再構築を図る
    ※ECのありかた、宅配から店舗受渡し、定期巡回配送などモーダルミックス

 

 

物流コストはこれからどうなるか?

 トラックドライバーのなり手が不足して、遊休トラックが駐車場に停留している実態は日々悪化しているという。この5年間で急激に需給が緩和されることは予想しづらいが、いずれ生産量を含めた物量の低下は進み、自営トラックの総合融通も必死なので、物流危機は自然解消されると踏んでいる。
 売上高比率で5〜10%という日本の物流コストは欧米に比べても格安であり、そのために業界の成長や設備投資に圧力がかかってしまっている。
 物流や配送をコスト一辺倒で評価するのではなく、販売や生産の垂直統合としてのSCMとして見直し、その機能を改めて評価する時期にかかっていると思う。

  街なかを漠然と走るトラックは、競合他社の動向や市場の活気を測るセンサー機能を持っているし、搭載したカメラやセンサーでビッグデータを集積することで、配送コースの自律化や自動運転への情報収集が進むことだろう。

 ロボティクスも24時間稼働の物流センターでは常用されるようになるだろうし、3K職場と忌避された現場にもITやAIが当たり前となり、先進技術であふれる実験室に様変わりすることすら期待できる。

アウトソーシングからインソーシング

 コストだけで契約を結べば、相手の内情や本当に重要な情報は開示されす、ある日突然にホールドアップされることが起こりうるリスクとして認識できるようになった。
 契約論がノーベル経済学賞と評価される意義と背景は21世紀の企業経営にとっての、水平展開や垂直統合の再評価となっている。
改めてオリバーハートの契約論を振り返る時期だろう。

この記事の作者
コラム記事のライター
花房陵

ロジスティクス トレンド㈱

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