物流回顧録<続々9回>コンビニ戦略と物流の変遷
はじめに
コンビニは今や社会のインフラと言っても過言ではない。我が国にコンビニが誕生して来年で50年になる。1974年に20坪で扱い商品3千品目でスタ-した、フランチャイズ方式の生活必需品販売の小売店だ。2023年現在日本全国で5万店以上の店舗を有する、社会生活には欠かせない存在に成長し途中何度も店舗過剰の危機が言われたが、現在もなお拡大が続いている。その理由を検証する。
コンビニエンスの本質を実現する販売戦略
1.店舗立地
買い物をする消費者にとって便利なことは、自宅の近くに店が存在することである。一定の地域に高密度で多数の店舗を出店するドミナント戦略により地元地域での認知度を高める効果と物流面での小口配送に効果を発揮する。現在もセブンイレブンの一日の販売額が他のコンビニより約10万円程度多いのは物流効率の高さによるところが大きいものと考えられる。
2.死筋商品排除の戦略
セブンイレブンにおいては創業当初から20坪の店内に3000品目の商品を販売していたが販売効率を上げるために、1年間で死筋商品1500品目を入れ替えて売れ筋商品だけを扱う戦略で効果を上げてきた
3.利便性向上のための戦略
創業翌年から、年中無休、24時間営業を開始。「開いてて良かった」のコマーシャルでコンビニの便利性をアッピールした。また1983年にはPOSレジを全店に導入し、単品管理を実現し、販売機会ロスと廃棄ロスの最小限化を目指した。IT戦略の成果である。
4.商品戦略
品揃え戦略としておにぎりや弁当など「おふくろの味」を売ることに加えて、利益率の高い自社ブランド製品の開発を行うなどのメーカー的な要件も加え、更に商品販売だけでなく80年代には宅配便の取次やコピーサービスを開始し、87年には住民サービス向上を目的として、公共料金の収納代行をスタートさせ、地域貢献をはかると同時に業態の幅を広げ、売上拡大に大きく寄与するとともにコンビニとして、サービス事業だけで利益額の20%以上の割合を占めるほどに貢献する事業に向上させることに成功した。
2000年代に入って設置したATMサービスによる情報技術(IT)を活用した、金融事業にも参入し、365日24時間営業の利便性をフル活用して、消費者が求める先進的なサービスを提供するなど、人口が減って高齢化が進むなか、コンビニは飽和が近いと言われてきたが常に顧客の望むことを素早く察知して社会の変化に対応していけばまだまだ成長できる、と考えられるようである。
コンビニの物流戦略
1.日本の流通業で初めて共同配送がスタート
セブンイレブンでは、1980年に牛乳の共同配送がスタート。それまでは一店舗への納品車両台数は1日70台にも上っていた。半年後には納入各社の配送経費が3分の1に低減し、販売量も増加した。このセンター集中納入方式は全国の流通業で採用され一般化し、物流効率化の一翼をになっている。
共同配送はその後飛躍的に進化し、商品の特性に合わせ4段階の温度帯別に集約する共同配送センターを地域ごとに設置され、納品車両は1日9台まで削減された。
その後、このシステムは海外進出する際に我が国独自の効果的なシステムとして採用され、コンビニが海外に進出する原動力の一つとして威力を発揮することになる。
2.サプライチェーンの役割
災害時対応に威力を発揮。1995年に起きた阪神淡路大震災、2011年3月に起きた東日本大震災等による大災害が発生すると、物流網が寸断されその機能が失われる。震災発生直後に町から物がなくなった時に食料品・水などの生活必需品を毎日全国の隅々まで運び、生活や経済を支えてきたスーパーやコンビニが威力を発揮した。
実は、かなり以前から台風災害時や道路渋滞時における各種の解決対策が実施されてきた。例えば、千葉県で起きた内陸部の台風災害時には、倒木や風で飛ばされた障害物のため通常のトラック輸送が出来なくなったため、マウンテンバイク複数台を連ねて道なき道を走り抜け、おにぎりや弁当を店頭に届けたり、毎年海水浴シ-ズンになると神奈川県の三浦半島では横浜方面から一本しかない国道 号線の片側だけ多くの海水浴客の多数の車で大渋滞を引き起こす。当然半島の途中に立地するコンビニの店頭には必要とする商品が届かない恐れがある。
そこでセブンイレブンが解決策として実施したのが、早朝に内陸部にある弁当や総菜工場から商品をヘリコプターに積んで半島の先端部にヘリポートを設けて、そこで配送用のトラックに積みかえて複数店舗に届け、必要な時間に必要な商品が買える方法を工夫した。
コンビニの使命である1年365日24時間必要とされる商品は必ず購入できるという利便性に対するストア・ロイヤリテイを厳守する姿勢が消費者の信頼につながっている。
震災や災害時にも即時復興に貢献できるサプライチェーン態勢が常に準備されている。全国に広がる5万店以上のコンビニ多店舗ネットワークがその効果を発揮する。
3.宅配システム
EC取引の発展に伴い、商品受注後に即配のニーズが高まるなかで、宅配便の代行業務に次いで、電気自動車を使用した宅配サービスが開始された。CO2削減による脱炭素社会への移行を目指した試みである。
ITを活用しての売上拡大を図るとともに、社会貢献にも寄与する活動で地域社会との密着サービスの開発である。
4.電子マネー
公共料金の収納代行サービスや住民票の写しや印鑑登録証明書の発行サービスに加えて更なる利便性向上を目指して電子マネーを導入し、代金支払が簡単に出来るようになった。
生活インフラの構築にますます貢献し消費者の利便性を高める施策は続くものと考えられる。コンビニ文化の進展が期待される。
この記事の作者
田中徳忠
有限会社セントラル流通研究所