物流塾

ミスを撲滅したければコレをやれ!顧客のハートを射止めるための物流品質向上作戦!(上)

はじめに

物流事業者にとって顧客が何を求めているかは大変気になるところだろう。顧客と常に会話をしていないと相手のニーズを的確に把握することはできない。事業者仲間での情報交換も大切なことではあるがそれよりも顧客との会話に時間を使いたいところ。顧客が真に物流事業者に期待していることは顧客の口から直接聴くことが一番である。そうは言ってもなかなか顧客のニーズを入手できないという方のために今回は物流品質についての視点で情報を提供させていただく。

物流事業者の品質不良

御社が顧客に流出させてしまった不良は年間どれくらいあるだろうか。この問いについて常に「件数」と「比率」で答えられるようにしていただきたい。例えば昨年一年間で不良流出件数は「45件」で全オーダー数に対する比率は「75ppm」というように数字で把握しておくことが必要。当然のことながら顧客は物流事業者の品質を非常に気にしている。先の質問に即時に回答できない物流事業者と付き合いたいとは思わないだろう。考えてみていただきたい。顧客(この場合は荷主会社)の商品を最終ユーザーに届けるのは物流事業者である。この時に誤品や誤数、商品破損などを発生させたとしたらその物流事業者というよりも荷主企業のイメージダウンになってしまうのだ。物流事業者にとって百万分の一件であったとしても最終ユーザーにとって一件のエラーは品質不良率にすると百パーセントであることは言うまでもない。

物流事業者を選定する際に顧客は物流事業者評価を実施する。評価のカテゴリーはSQDCM、すなわち安全、品質、納期、コスト、マネジメントの五つである。その内今回は「品質」についてご紹介しよう。図1.をご覧いただきたい。ここにお示ししたように顧客は物流事業者に質問状を送付して回答してもらう「RFI(Request for information :情報提供依頼)」による評価と実際に物流事業者の現場を訪問して評価する「現場訪問」評価の二つの評価を実施しているケースが多い。「RFI」による評価のポイントはその回答の裏付資料(証跡)の提出を求められることである。なぜなら回答は回答者の自己申告であるため、評価者はその回答の正当性を判断するためだ。従って、もしその資料の提出が無ければ評価は「0点」になることに注意が必要だ。これはその物流事業者がきっちりとしたマネジメントを実施しているかどうかも見られているということを示している。

物流不良の類型と発生要因

物流不良の類型を図2.に示しておく。これらの発生要因を認識しそれを撲滅する活動が必要になる。そうは言っても人間が行う作業においてはエラーをゼロにすることは困難だ。そこで物流事業者の方には人間の意識とエラーの関連性を知っていただくとともに、その上でエラーを発生させない方法を考えていただきたい。

図3.をご覧いただきたい。この図では人間の意識が「正常、明晰な状態」であればエラー発生確率は百万分の一であることを示している。ただしその状態は長続きしない。作業者に仕事をさせる場合、作業編成の組み方などを考慮し緊張状態を長時間継続させないことでエラー発生を極力防ぐように心がけたい。

その他にエラーが発生する要因には「たぶん大丈夫という思い込み」や「規則を守る意思がないことによる事故」、そして「警告を無視したことによる事故」などが挙げられる。この内「たぶん大丈夫という思い込み」に1997年にスペインカナリヤ諸島で発生した濃霧の中における史上最大の航空機事故が挙げられる。これは副操縦士が行った管制塔とのやり取り時に通信不良が発生したことに起因する。この時管制官の「OK、離陸待機せよ」との指示の内「離陸待機せよ」の部分が通信不良でよく聞き取れなかったのだ。管制塔とのやり取りは副操縦士の責任で行うものだそうだが、この時は操縦士が「OKと言ったのだからたぶん大丈夫だろう」と思いこみ、確認せずに独断で飛行機を発進させてしまった。結果的に583人もの犠牲者を出す大惨事につながってしまったのだ。

実は物流現場でも同様のことが発生していると考えられる。つまりしっかりと確認せずにたぶん大丈夫だと思い込んで誤数を出荷してしまったり、標準作業を無視して三点照合を行わなかったりすることで誤品を発生させてしまっているのだ。今一度このようなことが社内で起きていないか自らチェックしていただきたい。

この記事の作者
コラム記事のライター
仙石 惠一

<Kein物流改善研究所 仙石惠一>
・物流改革請負人。ロジスティクス・コンサルタント。物流専門の社会保険労務士。
・自動車メーカーでサプライチェーン構築や新工場物流設計、物流人財育成プログラム構築などを経験。
・著書 「みるみる効果が上がる! 製造業の輸送改善~物流コストを30%削減~」
・日刊工業新聞、月刊工場管理、月刊プレス技術など連載多数。
http://www.keinlogi.jp/ 無料メルマガ 「会社収益がみるみる向上する!1分でわかる物流コスト改善のツボ」 https://www.mag2.com/m/0001069860

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