物流塾

物流回想録<続々13回>物流情報システムの再考

物流情報システム入門を執筆

今から32年前の1991年に創刊された月刊『日経ロジステイクス』(日経BP社発行)誌は物流戦略の総合情報として先進的な記事を掲載するスケールの大きな雑誌であった。偶然の縁で筆者が創刊号から12ヵ月連載で「実戦物流情報システム入門」を書くことになった。

当時の我が国経済は1986年頃から好景気に入り、1992年に終了を迎える前の、いわゆるバブル景気と呼ばれた時代であり、企業経営において物流システムの重要性が認識されつつある時代であった。

物流システムの効率化、合理化に加えて、社会的なニーズの変化に対応し、企業間または企業と市場の間を結び付けるネットワークシステムの構築を通じて競争優位を獲得し収益の拡大を実現することを目指した時期である。表題にあげた「実戦」の通り、成功したシステムの事例紹介が中心で、かなり具体的、専門的な内容になっている。

メーカー事例が多くバーコードを活用した2社と生産計画と連動した在庫管理・配車管理の効率化に成功した3社、食品卸によるオンライン端末貸出による受注・納品代行サービスによる売上増大の事例、製品の50%以上が特注品で数万点にのぼる半導体メーカーの在庫精度向上の事例、大手コンビニによる1日3回に及ぶ時間指定配送、取扱商品の半数を死筋商品として排除し、売れ筋商品に絞る在庫管理システムや、540店舗をオンライン化した婦人服店の高回転率商品管理等々いずれも当時の最先端をゆく物流情報システムを紹介したのであった。バブル崩壊後は、大量生産・大量販売を目指す経済から、世界で通用する多品種少量生産へと産業構造の高度化による効率経営へ移行する経済社会の変化が起こった。その変化の流れを受けて物流システムも見直しが行われた。以前は企業内物流のシステム化が指向されていたがインターネットの発展とともに、グローバリゼーションの進展に合わせたサプライチェーンマネジメント(SCM)による競争優位がクローズアップされることになった。企業グループとして全体最適な高機能システムを持つことで、顧客ニーズをより一層満足させる差別化戦略の実現が指向された。

物流直営化への挑戦と物流全般アウトソーシングの2大潮流

経済社会の変化による物流システムの対応が注目される。業種・業態を問わず、メーカーから小売に至るまでSCMシステムを構築運用することは費用・時間・システム品質の保証迄考えると膨大なものになる。従って、物流の重要性は理解できても、活動は必要最低限に抑え事業本来の持つ強みに集中して発展を図ることを選択し、物流全般をアウトソーシングする考え方と、他社との競争優位の手段として自社の物流システムを再構築して成長発展を指向する、という2つの考え方が存在する。

コロナ禍において、人々が出歩くことを避ける傾向の中にあってもEC通販の市場は、欲しいと思うほとんどの商品がネットで注文でき、外出不要で、注文した翌日か翌々日には自宅や指定場所に確実に届く利便性により、伸び続けており、今後もその傾向は続くものとみられる。ありとあらゆるものが、必要な時に、必要なだけ、適正価格で指定場所に、スピーディに届くという、便利で快適なサービスが受けられることは現代人にとって最高のサービスである。これを実現するのがコンピュータ制御による全自動運転AIロボットの活用による無人化オペレーションの巨大倉庫である。以前の巨大物流センターには多くの作業員や在庫管理要員、配送要員などが働いていたが最新の物流センターにはほとんど人がいない。AI化が最も進んだ事例である。

3PLへの移行

しかしながら、実際に企業内でこのようなシステムを構築するにはかなり高額の投資金額を必要とする。実際にシステムを運用している企業は年間売上高が1千億円を超えている例が多い。少なくても数百億円以上の年間売上が前提になるようだ。従って、中堅・中小企業において同じようなサービスを実現するには、サードパーティーロジスティクス(3PL)と言われる物流総合一貫システムの受託サービスを利用することでローコストかつ高品質の物流が実現可能となる。

3PL市場において実績を上げている例としては、ナンバーワンの実績を有するロジスティード(日立物流)、佐川ホールデイングス(佐川急便)、丸和運輸機関、ハマキョウレックス、その他。それぞれの得意な業種、業態などに特化した専門的なサービスを提供し、顧客の規模や、ニーズに合わせた効果的且満足度の高いサービスを提供して、経営としても物流業界をリードする高収益を実現しており、今後とも一層の拡大発展が期待されている。

最近では、大規模で高度な物流センターの需要の増加にあわせて首都圏関西圏に於いて、物流不動産事業者が主として商業地開発を行ってきたが、今や物流施設は付加価値の源泉としての「物流センター」として位置づけられ、センター内に店舗や小規模工場なども取り込み、物流プラットフォームとしての保管・配送拠点を中心に、「街作り機能」を目指す動きも増えている。

物流不動産事業の展開

そのルーツは古く、1965年に東京商工会議所が中心となり大田区平和島に首都圏の流通基地として東京流通センターが設立された。その後センター周辺に団地倉庫及び冷蔵団地倉庫が建築され、更に板橋区高島平にも流通センターが構築され、更に足立区と江戸川区にも「東京団地倉庫」が建設されて、現在に至っている。しかし建設されてから時間が大幅に経過し、施設・設備内容等に対する最新の顧客ニーズに応えることが難しくなって建て替える検討に入っている。前述のように近年は日米他外資系の民間物流不動産業者による高機能で、巨大規模の物流センターの建設が進んでおり、日本GLP(本社シンガポ-ル)は運用棟数130棟、運用資産2兆5千億円(2021年3月現在)、国内床面積シェア26%を占め、2位のプロロジス(本社米国)を大きく上回っている。2016年には大阪市と住吉区が計画している「大規模街づくり」の開発に参画し188億円をかけて56000㎡の物流施設2棟、店舗施設のある「にぎわいゾーン」を建設し、担当している。

国内企業では、日本の物流不動産市場の主要プレイヤーとして野村不動産、大和ハウスグループ、オリックス、三井不動産他が上げられる。

物流と街づくりがセットになった「物流パーク(公園)」とも言えるSDGsに配慮して、購入した森林を外部に公開するなどの事例も増えている。更に災害発生時の施設利用を想定して県や市と災害協定を締結し倉庫、車路、広いバースを提供し活用してもらう取り組みが増えている。地域活性化計画への取り組みも千葉県八千代市や大阪府茨木市などで進んでいる。

物流情報システムに関しては、以前のように保管・配送だけを対象に考えるのではなく、地域全体を考慮に入れた総合情報システムの展開へ変わっている。コンピュータハードウエアも画期的進歩を遂げ、量子コンピュ-タの登場により今まで不可能とされてきた高速大量の計算などに加えて、正確な台風予測やコロナ対策の対応までを含む各種事象が解決できる可能性が膨らんでいる。

中小企業においても自社での情報システム対応に加えて大量データをクラウドシステム利用によるローコストのデータセンター活用による戦略システムを構築するなど、物流情報システムDXの効果を考える時代に入ったと思われる。

この記事の作者
コラム記事のライター
田中 憲忠

セントラル流通研究所

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