物流塾

物流業界の進化方向〜大きければ安泰だ〜

 物流ニーズに対して、提供側の運輸、倉庫、総合物流の6万社以上の事業者が中小零細企業で構成されており、その絶対数が多すぎる点が物流問題の本質にあります。中小企業の共通課題は従業員の待遇劣化と募集人手不足であることは、自らの規模つまりは組織コスト構造に原因があります。事業規模が小さ過ぎるので間接部門の管理コストや組織機能が不十分となっていて、設備投資も少なく、そのための事業生産性の低さが待遇面での見劣りとなり、募集人手不足の解消に向かわないのです。 

繰り返しますが物流業界の低迷の主な原因は、事業者の多さとそのことによる過当競争と単純事業部分の下請構造にあります。大手企業が受託した物流サービスを規模の小さい、営業力のない中小企業が二次受託する構造が多くあるために、中小企業は事業拡大を志向することがなかったのです。逆に下請けを利用することで大手事業者は労少なくて高収益を維持できているのです。 

どうすればビッグになれるか? 

経営統合が切り札と分かっていても取り組めない事情には創業者の悩みがあります。共同営業が必要であり、大手にも対抗したいと考えていた経営者は昔からも存在していました。「大きくなりたい、成長とは拡大だ」と努力を続けていても、毎日の競争のために余裕がありませんでした。拡大には資本が必要で、投資こそが絶対条件なのですが従来は金融が許しませんでした。 

 単独ではトラック車両を増やす、ヒトを募集する、現在の労働環境を改善させるのが難しいので、協同組合を組織していたのですが、親分同士が結束することはなく、言い出した者だけが先行し、取り残される者が多かったのが昭和の事業提携、協同組合の実態でした。 

 わずかでも資本力がある者、事業経験の長い者、地域に特化した者だけが得をしたのが協同組合の実態です。新たな設備投資のために個人保証によって融資を集めた者だけが生き残っているのです。令和を前にして時代は大きく変化してきています。金融が銀行から私募債、IPOによる自己増資などの直接金融の手法を利用して、自己投資を繰り返したり、自己資金による企業買収を手掛けることで規模拡大を図る企業が登場しているのです。 

 経営統合や企業合併は企業経営者はそれにより地位を追われますが、規模の拡大が実現できれば競争は適者生存となり、従業員待遇も改善されて行くことになります。 

 ビッグになるには資本の金融手法が必須 

 物流企業は自動化設備投資が製造業よりも遅れているための労働集約産業ではありますが、 課題解決には生産性向上策しかなく、それは事業統合による規模拡大が常套手段です。現在の過当競争回避と事業存続のための経営統合が必然の選択となります。 

 企業間の経営統合による規模の拡大が自然発生的にロボティクスなどの設備投資を誘発し、物流の自動化、大型化は進むこととなり労働集約から設備資本集約の装置産業に向かうことは必至です。 

 多様な自動機器導入により物流作業の標準化が進むことで、正社員比率はさらに下がり労働条件の緩和が見込めます。現在危惧されている働き方改革の法的制約も非正規雇用者には及ばず、非正規雇用者の待遇面ではむしろ改善する事となり時間給条件は上昇するでしょう。 

 トラック運輸部門でも設備投資の対象が荷台、カーゴ台車、パレット荷台、コンテナなどの標準容器への導入が一層進み、長距離輸送では中継基地が整備されるはずです。ドライバー交代や車両交換などの手法で拘束時間の分割化が進みます。 

 これからの人口減少に伴う消費市場の縮小は、装置産業化を志す事業者の共同開発によって規模の拡大が成長条件に変化してくると予想できます。競争は価格料金ではなく、規模と格付けによって競争なき勝利が当然となるのです。 

この記事の作者
コラム記事のライター
花房賢祐

ロジスティクストレンド代表

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