物流塾

ジャパンモビリティショー(旧東京モ-ターショー)

2023年10月26日~11月5日にモビリティの最新技術を一堂に集めたJAPAN MOBILITY SHOW/ジャパンモビリティショー(旧東京モ-ターショー)が東京ビッグサイトで開催された。装いを新たにした本展示会ではこれまでのように自動車を中心に、ドローンやロボットなど「移動」をキーワードに多種多様なアイテムが大集合。コロナ禍で4年ぶりの開催だったものの、人気に衰えはなく主催者側の目標入場者数「100万人」を優に超す約111万人超が来場した。

今回は「地球に優しい」SDGsを中心に、物流関連の注目アイテムをご紹介しよう。

★三菱ふそうトラック・バス

「5分で交換完了」のEV向けバッテリー交換システム&無線充電システム

同社が発売する小型EVトラック「eCanter」を始め、EVのアキレス腱ははやり「充電時間の長さ」。この解消のため、米アンプル社のバッテリー収納用モジュールを装着、充電時間を大幅短縮するための実証試験を実施中。要するにバッテリー自体を交換する方式で、EVがバッテリー交換ステーションに到着後、ロボットが自動で〝満タン〟のバッテリーと交換。最終的に交換時間5分が目標という。

並行して非接触型の無線充電システムの開発にも積極的で、ダイヘン製と共同で同社製無線充電システム(出力15W)も展示。IHと同じ原理を用いて充電時間の大幅短縮に挑む。

EV向けバッテリー交換システム

 

無線充電システム

 

★日野自動車

FC大型トラックとしては日本初の本格輸送業務を行った「プロフィアZ FCVを出展、もちろん一般公開も初

既存のディーゼル・エンジン式「プロフィア」(6×2駆動・FRモデル)をプラットフォームに、トヨタFC(燃料電池)システム、高圧タンク・システム、高電圧リチウムイオン電池、eアクスル(電気オーターつき駆動軸)を搭載して「FC大型トラック」化。

2023年3月に輸送業務の実証試験を開始、アサヒグループジャパン、西濃運輸、NEXTロジスティクス・ジャパン、ヤマト運輸と共同で、都内と群馬、神奈川、茨城などをつなぐ物流ルートで、静寂性や低振動も含めた様々なデータの収集を継続中

「プロフィアZ FCV」

★極東開発工業

砂利積載用荷台の軽量化で脱炭素と人手不足解消に貢献

「リヤダンプ(耐摩耗鋼板仕様)

ダンプカーによる砂利や土砂の運搬も立派な物流で、同社は耐摩耗鋼板「HABOX」(一般鋼と比べ強度は約3倍)を砂利積載用荷台(ボデー)の軽量化に挑む。パワーショベルなどによる砂利や砕石を勢いよく積載するのが常であるため、薄肉でも強度を保持しつつ、耐摩耗性にも優れたHABOXを採用。

荷台周囲の枠(アオリ)に必須の補強部材も不要となった結果、4t車の場合、従来の量産型ボデーと比べ約120㎏も軽い約650㎏を達成、燃費向上はもちろん、ペイロード増加による往復回数の低減も期待できる。

 

耐摩耗鋼板「HABOX」で軽量化したボデーのダンプカー(10t車)

 

★山田車体工業(ヤマダボデー)

同社は得意の鮮魚輸送などに使う、内装がステンレス製・鏡面仕上げの箱型ボデーを持つ冷凍・冷蔵トラックの技術を活かし、非常に高価で大型の半導体製造装置運搬用のトラック・ボディ「フルリフトFLAP」を開発。

「鏡面仕上げ」にこだわるのは「防塵」で、半導体製造装置自体がいわば半導体の塊で、チリ・ホコリに非常に弱い。それ以前に、半導体製造工場はいわば高度なクリーン・ルームで、そこにホコリだらけの製造装置を運び入れるなど論外。内装がスチールの場合、塗装が剥げたり錆が浮いたりする可能性があり、これ自体がチリ・ホコリになる。

また、半導体製造工場の室温は⒛℃前後で一定に保たれているため、通常のトラック輸送で搬入した場合、急激な気温変化で半導体製造装置の内部が結露する危険性が高く、最悪の場合数十億円の”全損”ともなりかねない。

加えて、製造装置の大型化にも対応し、「後ろ載せ」ではなく、ウィング型トラック型となっている。

「フルリフトFLAP」のルーフは最大700mmも上昇可能で、フォークリフトによる積み降ろし作業が楽

 

 

ボデー内装はステンレス製の鏡面仕上げでホコリの侵入を防ぐ

 

★日本トレクス

コンテナのようにトラック車体から切り離して別のトラックに乗せ換えられる箱型ボデーを「スワップボデー」と呼び、同社は2000年代初めからこの製造を手掛ける大手だ。

トレーラーのようにけん引免許や事前の通行許可申請の必要がないことに加え、荷物扱いなので環境性能割や種別割が非課税となること、中継輸送にピッタリな点などが評価され、物流版「2024年問題」の救世主とも言われる。コンテナにも似ているが、コンテナの場合積み降ろしにフォークリフトなどが必須なのに対し、スワップボデーが自前で足(6脚)を持ってテーブルのように立つことができ、下の隙間にトラックをバックして入れれば積み込み完了となり、この間人員はドライバー1人でOKという点が大きな違いだ。

今回同社は鮮魚輸送などコールドチェーン対応の「スワップ冷凍バンボデー」を展示、補助エンジン式冷凍機をボデー側面に装備し単体で予冷を可能にしている。

 

スワップ冷凍バンボデー

6本の脚で設置されたスワップボデーの下にトラックを忍ばせてボデーを積み込む手軽さ

 

この記事の作者
コラム記事のライター
深川孝行

フリージャーナリスト

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